市民の方からご相談を受け12月定例会で緊急質問しました。質問のタイトルは「新型コロナワクチン副反応の救済申請を市が抑制している疑いについて」です。ご相談くださった方は、新型コロナワクチン接種後に重い副反応が出ました。そのため健康被害救済制度の申請をしに、相談窓口である市の健康センターへ行かれました。しかしその窓口では、健康被害救済制度とは関係のない「副反応疑い報告」の案内がされただけでした。それだけではなく、間違った説明もされたり、不必要に要配慮個人情報を聞き取らたりするなどさまざまな市の問題行為がありました。
その方がこれはおかしいと感じて再度調べてみると、やはり市の大きな誤りでした。その誤りを担当課に指摘しても改善に向けた動きはありません。そこで私のところへご相談に来られました。私も情報をいただいて調べたところすぐに改善が必要な重大な問題だと認識し、緊急質問をするに至りました。
この緊急質問を受けて市は庁内調査を実施しました。調査を担当した職員の方は真摯に対応し、口頭でのやり取りでも問題をよく理解していることは明らかでした。また一定の改善もなされました。しかし最終的にまとめられた調査報告書の内容は口頭でのやり取りと乖離していました。また調査結果についても議会での報告がなされませんでした。
質問する理由
緊急質問を受けて調査がなされ報告書がつくられた
12月定例会で私が行った緊急質問「新型コロナワクチン副反応の救済申請を市が抑制している疑いについて」を受け、市は庁内調査を実施した。またその調査結果を相談者と私に口頭で説明し、全議員にも報告書を配付した。
同僚職員に対する調査であり追求の甘さを感じざるを得ないものの、口頭の説明では、調査担当者が真摯に調査して問題を理解し、また一定の改善もなされたことが伺えた。
しかし内部報告用として作成された報告書には不十分な部分が複数ある。問題はどこにあったか、本質的原因は何か。再発防止のためにどうするか等の記載が不足し、分かりにくい表記や構成になっている。
これを読んだだけでは市民や議員は状況を正しく把握できないだろう。
問題が起きた際に、組織の外部(今回は市民や議員)から指摘を受けることは、改善に向けて外部の協力が得られる絶好の機会だ。その際、情報が正しく伝わらなければ正しい協力は得られない。
情報が正しく伝わらなければ、担当職員の真摯な取り組み(尽力)も徒労に終わってしまう部分がある。
調査報告書は正確な情報を伝えるものに
そのため調査報告書をつくる際は、内部報告用としてだけではなく、市民や議員など、組織外の人に正確に情報を伝えることも大きな目的とするべきだ。
緊急質問を受けて2度(実際は複数回)調査をしてもらい報告書が作成された。調査した職員は、何が間違いだったか、何が問題だったかをよく理解していた。相談者と私への報告もちゃんと行い真摯に対応してくれた。
緊急質問がなければ市民の訴えは軽視され調査もされなかった
ただ今回、議員(私)がこうして緊急質問しなければ調査は行われなかった。相談者が相談に行っても、実質的に軽く扱われ調査をしなかったところは非常に問題。
報告書の内容が口頭説明と違い、また議会での報告もない
さらに報告書になったとたん、かなり異なる内容になった。またこの報告書は議員に配られたが、議会では報告されていない。
報告書の見出しは次のとおり。
+- 調査方法
+- 調査結果
+- 予防接種法に基づく副反応疑い報告制度と救済制度
+- 予防接種後の副反応に関する市の対応
+- 本事案の経緯
+- 本事案の背景と原因及び改善策
+- 今後の取組
+
何が問題だったのかを示すタイトルもなく、中にもはっきり書かれていない。全体がぼやけている。
私が報告書を書くならこうする
もし私が報告書を書くならどういう問題が起きたのかというのをまず最初に明示するだろう。たとえば(冒頭は)次のようになると思う。
主に次に示す6項目の誤りがありました。
+- 「健康被害救済制度」の申請を求めてきた人に、関係のない「副反応疑い報告制度」の案内をしていました。国が示すとおり、健康被害救済制度の案内だけをするべきでした。
+- 「健康被害救済制度が申請できるのは、副反応疑い報告がPMDAで承認されてから」という誤った説明をしていました。
+- 本人の病歴などの要配慮個人情報を、必要のないところで聞き取っていました。聞き取りが必要な際は事前に了承を得るとしている個人情報保護法に違反する行為でした。
+- 副反応に関する電話相談が毎日たくさんかかって来ているのに、その相談件数すらカウントしていませんでした。
+- これらの誤った対応を、市民から指摘があっても調査することなく、議員から指摘されるまで続けてきました。その間、健康被害救済制度の申請を諦めてしまった人数は分かりません。担当課は相談者に利益があると思ってやっていたようですが、結果として健康被害救済制度の申請が抑制されていた事態になっていました。
+- 個人番号の記入が必要のない書類については記入が不要だという説明をしっかり行わず、記入不要と記載された見本も渡していませんでした。
+
こう書けばどんな問題が起きたか分かりやすい。
間違いを明記せぬのは責任問題を恐れてか
間違いを明確にしないのは訴訟を恐れているからなのか。または責任を取る人がいないからなのか。つまり間違いを認めるとその職員の責任になってしまうから認めず、抽象的な表現にしておこうということか。
本来は市長が「私が責任を取るから、正直ベースで報告してください」と、そういう文化が育たなくてはならない。
間違いを明確にしないと改善できない
間違いを明確にしないと改善につながらない。問題が起きたら正直な態度で臨む必要がある。問題を抽象的な表現で捉えていると改善されず積み重なっていき、自分の首も絞める。
また原因については組織文化に踏み込んだところまでの深掘りが必要。分析が足りていない。
とにかく、報告書は、正直な態度で、
+- 起きた問題
+- 何が原因だったか
+- 改善と再発防止はどうするか
+
を明確にし、冒頭に書いて、必要に応じて詳細は後のほうに書けばよい。
何度も指摘した誤りが報告書に残っている
また報告書の冒頭で、一緒にしてはいけないとずっと指摘してきた「予防接種法に基づく副反応疑い報告制度」と「救済制度」が併記され、両者の違いが示されていない。普通に読むと混乱し、両者に関連があると捉えてしまう。
要は、対応はしっかりやってもらったが、報告書にはいくつもの問題がある。指摘しても直さず、最終版としてフィックスしてしまった。
職員が職員を調査する場合、同僚の責任になってしまうので「指摘しない、深掘りしない」という心理があるのは人間としてしょうがないことだと思う。なので私は、できれば第三者委員会に調査してもらいたいと言った。
ただ第三者委員会にも、組織の中に設けると、なれ合いで甘くなるところがあるなどさまざまな課題がある。第三者委員会が隠れみのに使われる場合が多いという話もある。
そういった背景から、市を律する仕組みに関して以下質問する。
①第三者委や内部統制の導入検討状況は?
市や市教育委員会が抱えるさまざまな問題改善に向け、第三者委員会や内部統制の導入検討状況は。
第1期小平市経営方針推進プログラムでは、事務処理におけるリスクへの対応を検討プログラムに掲げ、不正や誤りを防止し、業務を適切かつ効率的に行うための仕組みである地方自治法上の内部統制を念頭に置き検討を進めている。
現在、本市におけるリスク事案の整理をしており、来年度以降、内部統制の要素を一部取り入れた試行運用に全庁的に取り組んでいく予定。第三者委員会については、事案の重大さや影響度等により、設置について適切に判断する必要があると考えている。
緊急質問の事案も含め、市民の皆様に御迷惑をおかけした場合にはただちに内部で調査をし改善を図っていくことが重要であると考えており、第三者委員会を常設的に設置することは検討していない。
いじめ問題への対応や防止等のための対策を審議するため、教育委員会の附属機関として、学識経験者や法律、心理、福祉の専門家等の専門的な知識を有する者、関係行政機関の職員から構成されるいじめ問題対策委員会を設置している。
内部統制については、現在市において、地方自治法上の内部統制を念頭に置いた検討が進められており、教育委員会としてもリスク事案の整理をするとともに、来年度以降、内部統制の要素を一部取り入れた試行運用に取り組んでいく予定。
市が現在検討している内部統制とは?
議会で具体的にこういう話が出てきたのは初めてだと思う。ちょうどよい機会なので、リスク事案の整理とは何かや、試行運用というところも含め、小平市が現在検討している内部統制について解説を願う。
まず、内部統制とは、職員に間違いを起こさせない、万一不正が起こっても最小限に食い止めるための仕組みづくり。そのため、組織としての体制を整えていこうという考えの下に行われる。
平成29年の法改正により、地方自治法上の制度として位置づけられている。都道府県及び政令指定都市以外の地方公共団体においては、内部統制制度の導入が努力義務とされている。
これを背景に、令和3年5月に作成した小平市経営方針プログラムの中で、今後、リスク管理とその対応の在り方について検討するという項目が設けられている。それを根拠に、内部統制制度を念頭に置いた試行的な取組を進めている。
具体的には、リスクの発生した事案や、トラブルになった事案等を庁内から集め、今、内部で整理をしている。
今回の事案は内部統制検討の流れの中で捉えている?
今回の健康被害救済制度の事案は、この流れの中で捉えているか。
今回の事案についても、今後も発生し得るリスクのひとつとして、内部統制の検討においてすべきものと考えている。
今回のような事案が起きたら内部統制にどう組み込まれる?
たとえば今回のような事案が起きたとき、内部統制にどう組み込まれていくか。
具体的なことについては検討中で、この段階で詳しくは述べられないが、まず事由のひとつとして、こういう事由があった場合の対処方法等をマニュアル等に作成していくというようなことが考えられる。
総務省が求めている議会に対する適切な報告を今回しないのはなぜ?
今回の事案も内部統制の仕組みの中でひとつの象徴的な事例になると思う。
平成31年3月に総務省から出ている『地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン』の1ページ目に次の記載がある。
『議会は、長から独立した立場で、内部統制の整備状況及び運用状況について監視を行うため、統制環境に一定の影響を与えることとなる。したがって、議会に対しても適切な報告を行うことが求められる』
要は内部統制の中で考えている今回の事案については議会に報告をしなければならない。議員に報告書を配付したことで、議会へ報告したことにするのか。
今回の事案については、市長答弁で、議会に対して報告すると市長が約束した。その内容について内部で検討したうえ、このような形を取った。このことにより、一定の報告はしたと考えている。
議員への配付をもって議会へ報告したとすると、話が会議録に残らない。それでよいのか。今後の内部統制は、会議録に残さない形で報告していくというスタンスでいるという理解でよいか。
本事案については、文書の報告という形で報告したが、今後このような事案があった際の報告については、これから内部統制等の中で検討していきたい。
今回のことは、試行に先立つせっかくのよい機会。それなのに、議員への報告書の配付だけで終わるというのは、内部統制制度を進めようとしている姿勢に非常に疑問を感じる。いきなりつまずくことになる。
今からでもよいので、議会の諸報告のところででも、ちゃんと報告してほしい。どうか。
今回の件については、内部で決裁を取った上、市議会議長のほうにも対応を相談し、このような形を取った。今回のものについては以上で報告は終わっていると考えている。
試行に先立つ象徴的な事例なのに、いきなりつまずいた形になる。それでよいのか。市の文化や姿勢を非常に疑う。これは市長の問題だが、そんなやり方をしていて本当によいのか。
せっかく職員が頑張ってやろうとしていて、最初からしっかりしていない。職員の頑張りを無駄にするようなこと、市長がそういったことをやってはいけない。公開が原則というころも分かっていない。
議会運営委員会で話している中なのでどうなるか分からないが、議会運営委員会からも議会での報告を求めないという結論になったら非常に残念。しかしそういう姿勢はよくない。市民の福祉に深く関わることだ。
今回のように市民の相談が軽視されたことも内部統制の対象になる?
今回、市民が訴え、何回も相談に行っても、真面目に受け取ってもらえず、緊急質問になってやっと調べてもらうことになった。このことに関しては内部統制の対象になるか。つまり、市民の相談が市を律することにつながらなかったことに関しては、内部統制の対象になるのか。
今回の原因については、初期の対応がお互い思った方向に行かなかったというのが原因と思う。そういうリスクもあるということなので、リスクに対する対応が内部統制のひとつなので、該当する部分はあると思う。
では、そういったところもしっかり詰めていただき、報告は、議会に対してちゃんと会議録に残る形で報告していただきたい。
②対外的文書のあり方をどう捉えている?
内部統制を進める上で文書のあり方は重要だ。市民や議員等、外部の協力で改善を図るためにも
+- 市民に分かりやすく
+- 不足がなく
+- 取り繕わないこと
+- そして常に文書をベースにしたコミュニケーションが重要
+
になると考える。
そういった観点も含め、対外的文書のあり方を、市と市教育委員会はどう捉えているか。
市役所外に向けて発信する文書については、相手方に伝えるべき情報を分かりやすく正確に記すことが重要であると認識している。
市における具体的な文書の作成の仕方については、小平市公文書作成要領において、文章の構成や文体、漢字やかなの使い方など詳細に定めており、これにしたがって簡潔かつ明瞭に記載するよう努めている。
今後も、相手方に伝えるべき情報を分かりやすく正確に伝えられるよう、的確な文書の作成に努めていく。
教育委員会においても、具体的な公文書の作成については小平市公文書作成要領の定めに従い、簡潔かつ明瞭に記載することとしている。しかし対外的文書については、読み手が内容を十分に理解できるよう、平易な表現を用いることも必要となる。
今後も、相手方に伝えるべき情報を分かりやすく正確に伝えられるよう、的確な文書の作成に努めていく。
今回は時間がなく文書作成要領のところを深掘りできなかったが、また機会をあらためて確認する。構成や文体の作成要領に問題があるのではと感じる。
よく使われる「誤解を招く表現だった」は、「私は間違えていません」という意味にもなる
文体に関わるかもしれないが、相談者の方からなるほどという御指摘をいただいた。
行政の謝罪文で、よく「誤解を招く表現だった」と書かれている。これだと「私は間違えていません」という意味にもなる。
正直に「誤解を招く表現だった」と言わないで、「表現を間違えていました」と認めることから改善が始まる。当会派の伊藤議員も常々言っているように、言葉の使い方はとても重要。言葉の使い方で組織の在り方が変わってくる。
調査報告書には当事者の意見も付けるよう検討を
またこういう事例があったときには、報告書が出た段階で当事者にその内容も確認してもらい、報告書に意見を付してもらうことも、とてもよい方法だと思う。
当事者がその報告書に対してどう思っているのか、何が不足しているか等を補足してもらうことは、本当によい方法だと思うので、そのあたりも検討していただきたい。
以上