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トピックス

雑多な情報をまとめています。

就学相談員が作成する報告書とは

就学相談の進め方とスケジュールについては、次のサイトに資料があります。

就学相談員が、就学支援委員会に相談内容を報告する際、報告書を作成します。その報告書の様式は東京都教育委員会が定めており、次のサイトに資料があります。

込み入った資料ですので、今後、解読して、分かりやすくまとめたいと思います。

(この項目の最終更新:令和6年1月22日)

特別支援教室申し込みに医師診察記録が必須とされている理由

東京都教育委員会が定めた「就学相談の手引き」に、必要な資料のひとつとして医師診察記録が記載されています。

また、「令和3年度 就学・転学相談手続及び留意点について」というスライド資料(P18)には、次のように記載されています。

就学支援ファイル作成の留意点

様式3 医師診察記録の提出について

総合的な判断の一つである専門家(医師)からの意見を確認するための書類であるため必ず提出すること。

検査結果、行動観察記録等では代用はできない。

愛の手帳など障害の有無が分かる書類の写しがある場合は、受理のみ。

様式3の提出後、都の相談と手続きを開始する。様式3は、就学相談のために取得した最新のものを提出。

様式3は、上記サイトに掲載されているこちらの様式集にあります。

なぜ医師診察記録が必要とされているのか、それ以上の理由が書かれているところは見つかりません。客観性を確保するために必要としている可能性があります。

小平市は、この手引きにしたがって、学校施行令(?要確認)を作成しているそうです。

(この項目の最終更新:令和6年1月22日)

通級による指導が不適当とされる理由

通級による指導に関しては、例えば次のサイトにまとめられています。

通級による指導が不適当(不可)という判断が出る理由を、私がこれらの資料を読み、また担当課に聞いた範囲で解釈すると、次の6点になります。

  1. 知的障害の場合
  2. 障害の状態・状況が変わり、通常の学級での指導が適切と判断された場合
  3. その他環境が変化し、通常の学級での指導が適切と判断された場合
  4. 今後1年間の具体的な指導方針や指導計画が明確にならない場合
  5. 今後1年間、通級に通っても指導目標が達成できないと判断された場合
  6. 不登校になった場合

それぞれについて解説します。


1. 知的障害の場合

次のように「知的障害者は通級指導の対象ではない」とされています。

なお、知的障害者については、知的障害者に対する学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な指導は、生活に結びつく実際的・具体的な内容を継続して指導することが必要であることから、一定の時間のみ取り出して行うことにはなじまないことを踏まえ、現在、通級による指導の対象とはなっていません。

文部科学省:3 通級による指導の制度的位置付け

そのため、知的障害があると判断された場合、通級での指導は不適当となるようです。その後、知的の固定級に通うかどうかは、本人や保護者の意向が最も重視されます。知的の固定級に通わない場合、通常の学級に通うことになります。

2. 障害の状態・状況が変わり、通常の学級での指導が適切と判断された場合

次のように、「通常の学級で指導が受けられる状態になった」と判断された場合も、通級による指導が終了となります。

次に、通級による指導を受けている場合に、その児童生徒の障害の状態等を適切に把握し、その変化等に応じて、柔軟に教育措置の変更を行うことができるように配慮することが必要です。つまり、仮に言語障害者の場合であれば、その障害の状態が改善され、通常の学級でほぼ支障なく授業を受けることができるようになった場合には、通級による指導を終了して、通常の学級ですべての授業を受けるようにするということです。

文部科学省:3 通級による指導の制度的位置付け

なお、この理由により通級指導が終了する(退室する)児童・生徒の割合は、自治体によって0%から20%の範囲だそうです。小平市の割合がどれくらいなのかは分かりませんので、今後確認します。

特別支援教室は、学校での学習上又は生活上の困難さを改善・克服し、通常の学級のみで学校生活を送れるようにすること(退室すること)を目的としているが、目標を達成して退室する児童・生徒の割合は、おおむね0%から20%まで、区市町村によって大きな差がある。

東京都教育委員会:特別支援教室の運営ガイドライン
参考資料・特別支援教室の入退室等検討委員会報告書(令和2年12月)

3. その他環境が変化し、通常の学級での指導が適切と判断された場合

また、資料には次のようにも記されています。

なお、通級による指導の対象とすることが適当な児童生徒の判断に当たっては、障害のある児童生徒に対する教育の経験のある教師等による観察・検査、専門医による診断等に基づき教育学、医学、心理学等の観点から総合的かつ慎重に行うことが必要です。

文部科学省:3 通級による指導の制度的位置付け

「観察・検査・診断等により」という部分は、さまざまなケースがあると思われます。聞くところによると、例えば多動性障害のように見えても、発達障害ではなく、その子を取り巻く環境が原因になっている場合もあるそうです。そういう場合、環境が変わって落ち着く可能性が考えられるようだと、通級による指導が適当ではないと判断されることもあるようです。

4. 今後1年間の具体的な指導方針や指導計画が明確にならない場合

5. 今後1年間、通級に通っても指導目標が達成できないと判断された場合

この4と5は、かなり重要なポイントだと思います。通級での指導には「原則1年間」という縛りがあります。1年を超え、延長して通級に通うためには、次の要件をすべて満たさなければなりません。

  1. 当年度の指導目標が未達成であり、同様の指導目標で指導を継続する必要がある。
  2. 指導期間延長後の具体的な指導方針や指導計画等が明確である。
  3. 延長後1年以内で指導目標が達成できる見込みである。

特別支援教室の入退室等検討委員会報告書(令和2年12月)

つまり、何らかの理由により、「延長後の具体的な指導方針や指導計画が明確にならない」場合や、「指導目標が達成できないと判断された」場合は、その1年間で通級による指導は終了し、通常の学級へ移行することになります。

しかし、この条件に当てはまらず、退室となった子どもたちの行き場については、資料にはなにも記載されていません。どういうことでしょうか…。

6. 不登校になった場合

不登校児について、次のように記されています。

不登校である児童・生徒の特別支援教室の利用について、文部科学省は、特別支援教室の対象となるのは「通常の学級の授業におおむね参加しており、障害により一部特別な指導を必要とする場合である」という見解を示しており、また、「不登校の解消を主たる目的に置く場合は、別室登校等の『通級による指導』以外の枠組みによる登校支援を行うことが適当」との見解を示している。

不登校に対する支援のニーズが生じた時、それを特別支援教室の専門性で対応するというよりは、在籍する学校の登校支援等に関して、専門性を有する機関につなげたり学校全体として対応したりするなどの取組が求められる。特別支援教室の制度や事業趣旨をしっかり押さえたうえで、不登校の児童・生徒に対してはどのような支援が用意できるのか、各区市町村の不登校対応の部署等と連携を図って適切に対応する必要がある。

特別支援教室の入退室等検討委員会報告書(令和2年12月)

つまり、不登校児については、各市区町村の対応によるものの、文部科学省の見解としては「通級による指導は適当ではない」としているため、多くの自治体では通級での指導は不適当としていると思います。


以上の6点が、私がいまのところ把握している、通級での指導が不可と判断される理由です。これ以外にもあるかもしれません。

それ以外に、通級での指導が終了する場合

また、本人や保護者が通級での指導を受けたくないと判断した場合も、通級での指導は行わないことになります。

本人と保護者がその理由を理解・納得できるように

通級での指導が不適当(不可)と判断した際には、次のことが非常に重要です。

  • その判断に至った情報を可能な限り保護者に開示すること
  • 本人と保護者がしっかり理由を理解・納得できるまで説明を行うこと

時間をかけて説明しても、本人と保護者が理解・納得できないような場合は、制度自体に問題があるのではないでしょうか。

次の資料(再掲)には、さまざまな課題も示されています。

自閉症・情緒障害特別支援学級(情緒固定級)とは

自閉症・情緒障害特別支援学級についての分かりやすい説明資料は、例えば次のようなものがあります。

より詳しいことについて、自分なりに調べてざっくりとまとめてみました。

1. 法の裏付け

自閉症・情緒障害特別支援学級の設置根拠となっている法律は次のとおりです。

学校教育法(と学校教育法施行規則第137条)では、「特別支援学級は、原則として一から六の区分に該当するもののみ設置できる」とされています。自閉症・情緒障害特別支援学級は、このうち「六」の区分に該当します。

学校教育法(第8章・特別支援教育)第81条

2 小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。

一 知的障害者
二 肢体不自由者
三 身体虚弱者
四 弱視者
五 難聴者
六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの

また、学校教育法施行規則では、自閉症者と情緒障害者が明確に区分けされ、それぞれに特別の教育課程を設けることができることになっています。

学校教育法施行規則(第8章・特別支援教育)第140条

小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校において、次の各号のいずれかに該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。)のうち当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、(略)、特別の教育課程によることができる。

一 言語障害者 二 自閉症者 三 情緒障害者 四 弱視者 五 難聴者 六 学習障害者 七 注意欠陥多動性障害者 八 その他障害のある者で、この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの

2. 自閉症と情緒障害の違い

自閉症と情緒障害の違いについて、ざっと調べた限りでは、例えば次のようなレポートが出てきます。

このレポートによると、

学校現場で問題となっている「発達障害」の多くが、「情緒的障害」であり、『自閉症』とは区別されるものである

とされています。また、医学的な診断をつける際の基準となるICD-10では、次のように分類されている、としてます。

ICD-10での分類専門用語通称など
F7 知的障害精神発達遅滞知的障害
F8 心理的発達の障害広汎性発達障害自閉症、アスペルガーなど
学習障害
F9 小児期および青年期に
  通常発症する行動
  および情緒の障害
愛着性障害や強迫性障害情緒障害

このうち、F8とF9の診断がつく児童・生徒が、自閉症・情緒障害特別支援学級での指導対象と判断される可能性があると思われます。

3. 知的障害は対象外

また、東京都教育委員会では、知的障害のある児童・生徒は、自閉症・情緒障害特別支援学級での指導対象ではないとしています。

東京都教育委員会は、⾃閉症・情緒障害特別⽀援学級の対象は知的障害のない⾃閉症等の児童・⽣徒としています。

自閉症・情緒障害特別支援学級の教育課程の在り方についてその1

4. 全国の「自閉症・情緒障害特別支援学級」設置・通級状況(令和2年度)

次に、全国でどれくらいの自治体が自閉症・情緒障害特別支援学級を設置していて、どれくらいの児童・生徒が実際に通っているかを見るため、都道府県別の「設置されている学級数の割合」と、「通っている児童・生徒数の割合」を調べました。

4-1. 小学校

まず小学校について。

4-1-1. 学級数の割合

各都道府県で「学級数の総数に対し、どれくらいの割合で自閉症・情緒障害特別支援学級が設置されているか」をプロットしてみます。自治体ごとに次の計算で求めました。

自閉症・情緒障害特別支援学級の設置数

東京都は、赤い中抜きの四角で示しました。

驚くべきことに、東京都は全国で最低の0.5%です。東京都以外のほとんどの自治体は、設置割合が約5%以上で、9%を超える自治体も11あります。

4-1-2. 児童数の割合

次に、各都道府県で「自閉症・情緒障害特別支援学級に通う児童はどれくらいいるかの割合」をプロットしてみます。

なお、この割合が「同学級での指導対象となる児童の存在割合」に近いほど好ましい状況だと思います。自治体ごとに次の計算で求めました。

自閉症・情緒障害特別支援学級に通う児童数

トップの岡山は4.1%です。東京都は、ほかの自治体よりも1桁以上低い0.1%です。

なお、平成14年平成24年に文部科学省が行った大規模な調査では、「学習面か行動面で著しい困難を示す児童・生徒の割合」は約6%でした(ただし、この調査方法には課題があるため、6%も最低値と捉えるべきものです)。この約6%が、ひとつの目標値になるのではないでしょうか。

4-1-3. なぜ東京都は最低位なのか

なぜ東京都は、設置割合も通う児童数の割合も、全国で最低位なのでしょうか。考えられる原因として「知的障害特別支援学級に肩代わりをさせているのではないか」というものがあります。そこで、知的障害特別支援学級に通う児童数の割合を見てみます。

知的障害特別支援学級に通う児童数

しかし、こちらも東京都は低位にあります。ということは、「知的障害特別支援学級がすべて肩代わりをしているわけではない」と言えるようにも思います。ただし、さまざまな保護者からの声を伺うと、「知的な障害がないにもかかわらず、自閉症・情緒障害特別支援学級がないために、やむを得ず知的障害特別支援学級に通っている」という実態もあるようです。それを考えると、東京都は、知的障害の子に対しても、知的障害のない発達障害の子に対しても、固定級を用意して、そこで学んでもらうという考え方ではないのかもしれません。

次に考えられるのは、「東京都は、通級(特別支援教室)に、自閉症・情緒障害特別支援学級の役割を担わせているのではないか」ということです。そこで、通級に通う児童数の割合をプロットしました(令和2年度のデータがなかったので、令和元年度のものです)。

通級に通う児童数

予想はドンピシャで、東京都は2位の約4%となり、「東京都は、自閉症・情緒障害特別支援学級が担う役割を、通級(特別支援教室)に担わせているようだ」ということになります。

小平市が、答弁で「特別支援教室の実施状況を踏まえつつ」としていることからも、その様子が伺えます。

次に、今見たチャートを合わせて全体像を見てみます(令和2年度の「都道府県別・通級に通う児童数」がまだ公表されていないため、令和元年度のデータでプロットしています)。

合計では、ほかの自治体と似通ったものになりましたが、東京都だけ極端に「通級に偏っている」ことが分かります。

4-2. 中学校

次に、中学校についても同じデータを見てみます。

自閉症・情緒障害特別支援学級の設置割合と、通う生徒の割合です。数値として多少は増えますが、小学校と同様に最低位です。

次に、知的障害特別支援学級に通う生徒の割合です。

小学校が1.2%だったのが中学校では1.6%となります。

次に、通級に通う生徒の割合です。全国的に数値は小さくなります。東京都は小学校と同じく2位。

次に全体の状況です。

中学校も、小学校と同様に「通級に偏っている」ことが分かります。

4-3. 東京都が通級に偏重している理由

東京都に自閉症・情緒障害特別支援学級が極端に少なく、通級に偏っている理由は、平成22年に立てられた『東京都特別支援教育推進計画・第三次実施計画』に記載されています。

現在、都における発達障害の児童・生徒に対する教育的な支援は、主として情緒障害等通級指導学級において行われており、自閉症・情緒障害学級(固定学級)の設置はあまり進んでいません。これは、都教育委員会が、関係法令改正以前の情緒障害者(当時)の教育については、「原則として通級指導によって対応する」という方針を従前より示してきたことによるものです。そのため、小・中学校における自閉症・情緒障害学級の教育課程についても、実践研究の積み重ねはいまだ十分とは言えません。

東京都特別支援教育推進計画 第三次実施計画
第3章・区市町村における特別支援教育推進体制の整備

この計画は10年以上前に立てられているわけですが、その時点で、すでに次のような指摘もなされています。

通級指導学級の場合、国の通知(「学校教育法施行規則の一部改正等について」平成18年3月31日付17文科初第1177号)により、指導時数は年間280単位時間(週8単位時間)までとすることが定められています。

しかしながら、発達障害の児童・生徒の中には、通級による指導では学習や生活上の困難の改善が難しいと思われる児童・生徒がおり、そうした児童・生徒がやむを得ず小・中学校の知的障害特別支援学級に入級したり、都立知的障害特別支援学校の小・中学部に就学するといった現状があることも報告されています。小・中学校の知的障害特別支援学級や都立知的障害特別支援学校の在籍者の増加には、こうした児童・生徒のための教育の場が十分に整備されていないことも影響しているものと推測されます。

こうした状況を踏まえ、「重層的な支援体制」の整備に当たっては、各区市町村が地域の実情に応じて、自閉症・情緒障害学級の計画的な設置を進めることにより、特別支援教室や通級指導学級では障害による学習又は生活上の困難の改善が難しいと思われる児童・生徒に対する教育的な支援の充実を図ります。

東京都特別支援教育推進計画 第三次実施計画
第3章・区市町村における特別支援教育推進体制の整備

10年以上も前に実施計画で問題が指摘されているにもかかわらず、いまだに東京都が特別支援教室に極端に偏っている状況には驚きます。

また、平成29年に立てられた、『東京都特別支援教育推進計画(第二期)第一次実施計画』にも、次のような記述があります。

通常の学級に在籍する発達障害のある児童・生徒の中には、情緒障害等通級指導学級による指導では、十分にその成果を上げることが困難な児童・生徒もいます。このような児童・生徒に対しては、自閉症・情緒障害特別支援学級(固定学級)において、適切な指導・支援を行うことが有効です。

東京都特別支援教育推進計画(第二期)第一次実施計画
第2部第1章・特別支援学校における特別支援教育の充実

特に理由がないのであれば、東京都は、速やかに、ほかの自治体を参考にしながら、少なくとも同様の割合まで、自閉症・情緒障害特別支援学級の設置を進めることが望ましいのではないでしょうか。

都内の状況を詳しくみる

学級数について:多摩26市の状況

多摩26市の、令和3年度における、自閉症・情緒障害支援学級の設置状況を、東京都教育委員会のデータ集、自治体サイト、電話での聞き取りにより集め、プロットしました。間違いがあるかもしれませんので、正確な数値が必要な場合は直接教育委員会にお問い合わせください。

なお、ほとんどの自治体において「設置学校数はすぐには増減しない」ものの、「毎年ニーズに応じて(同じ学校内で)学級数を増減させる」としています。

多摩26市では、7割超となる19の自治体が、小・中どちらか、もしくは両方に、すでに固定級を設置しています。設置していない市は、小平市、八王子市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、稲城市の7市です。このうち、三鷹市は、設置を前向きに検討すると議会で答弁しています。

次の表に、令和3年8月1日時点の、「今後の予定」をリストしました。すでに固定級が設置されているいくつかの市が、新設を予定しています。

多摩26市・今後の予定
メモ
三鷹市現状設置0なものの、議会では、設置を前向きに検討と答弁。
町田市令和4年4月、中学校に追加設置予定。級数は未定。
東村山市令和4年4月、中学校に新設予定。級数は未定。
清瀬市小学校の学級を移設予定、最終的に学級数の増減予定なし。
羽村市令和4年4月、中学校に新設予定。級数は未定。
あきる野市令和5年4月、小学校に新設置予定。級数は未定。
西東京市令和4年4月、中学校に追加設置予定。級数は未定。

学級数について:東京23区の状況

次に、東京23区の状況です。東京23区は、多摩26市よりも設置が進んでおらず、4割に当たる9区だけが導入しています。

今後の予定は次のようになり、品川区と葛飾区が、追加で設置する予定です。「すでに設置している自治体が、設置学校数や学級数を増やしていく」様子が伺えます。

東京23区・今後の予定
メモ
品川区令和4年4月、2つの中学校に追加設置予定。級数は未定。
葛飾区令和4年4月、小・中学校に追加設置予定。級数は未定。

次に、令和2年度の、「自閉症・情緒障害支援学級に通う児童・生徒数の割合」と、「通級で情緒障害等として指導を受ける児童・生徒数の割合」を比較してみます。(今までのチャートと同じく、すべての学級に通う児童数、もしくはすべての学級に通う生徒数で割った割合です)。

児童・生徒数について:多摩26市の状況

多摩26市については次のようになりました。

なお、各自治体の「規模感」を見るために、全児童・生徒数を正規化し、マイナスの数値で示しました。最も児童・生徒数が多いのは八王子市で、小学校の全児童数は26,109人いますが、これが0.04となるように正規化しています。例えば、町田市は21,573人いるので、0.04/26109 x 21573 = 0.033となるため、町田市の規模はマイナス0.033で示しています。

小学校の状況です。

次に、中学校の状況です。

小学校は多摩市がトップで、中学校は青梅市がトップです。これらの自治体では、比較的情緒障害の子どもたちにとって手厚い(居場所がある)環境であることが伺えます。

なお、児童数・生徒数の規模によって、固定級や通級に通う子どもの割合(居場所の設置状況)が変わるかと思いましたが、特に関係はないようです。小平市より規模が小さい多摩市や青梅市の方が、手厚い環境となっています。

児童数について:東京23区の状況

東京23区では、世田谷区が最も規模(児童・生徒数)が大きい自治体です。

令和2年度時点は、全体的に固定級の設置数が少ない状況です。通級に通う児童・生徒数も、多摩26市と比べると少ないです。

これらを見比べると、小平市は「23区寄り」のポジションにあるのかもしれません。

人数割合は変わらないはずなので、小平市にも1校からでも導入を

同級を必要とする人数の割合は、どの自治体でも大きく変わらないはずです。そのため、例えば青梅市にならえば、小平市にも、全児童・生徒数に対して2.6%程度、固定級に対する潜在的な需要があるのではないかと思います。

また、通級も含めて考えても、手厚い市と比べ、小平市は、まだまだ足りていません。最も手厚い市と比べれば、小平市も現状の倍くらいは特別支援の対応を増やす余地があるともいえます。

また、すでに自閉症・情緒障害特別支援学級がどこかに設置されている自治体の場合、「学級数は、毎年のニーズに応じて増減させる」ということでした。当たり前のことですが、そのようにニーズに応じて増減させられるのは、「すでにどこかの学校に同級が設置してある場合だけ」です。どこにもなければ、増減させることができません。小平市も、どこか利便性のよい小・中学校に、少なくともそれぞれ1校は設置すべきだと考えます。

また、知的障害があることを理由に、「特別支援教室や自閉症・情緒障害特別支援学級での指導は不適当」と判断される子どもでも、知的支援学級に通うほどではない子どももいると思います。そういう子は「支援を受けながら通常の学級で学ぶ」より、情緒障害の固定級で学んだ方がよいケースもあるのではないかと思います。調べていきます。

就学指導から教育支援に

次に引用するとおり、文部科学省は平成24年の時点で、自治体が設置している「就学指導委員会」の名称を「教育支援委員会」に変更することを推奨しています。

現在、多くの市町村教育委員会に設置されている「就学指導委員会」については、早期からの教育相談・支援や就学先決定時のみならず、その後の一貫した支援についても助言を行うという観点から、「教育支援委員会」(仮称)といった名称とすることが適当である。「教育支援委員会」(仮称)については、機能を拡充し、一貫した支援を目指す上で重要な役割を果たすことが期待される。

共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)

小平市ももともと「就学指導委員会」だったものが、平成23年あたりから「就学支援委員会」という名称に変更されたようです。

聞くところによると、「指導」のときは、どちらかというと本人や保護者の意向ではなく指導上の観点から就学先が決められるというイメージでした。それが「支援」になってからは、本人や保護者の意向が重視されるようになっているとのことです。

チャレンジスクールとは

チャレンジスクールとは、東京都が、中途退学問題に対応するため、平成9年9月に立てた「都立高校改革推進計画」に基づいて、平成12年から順次これまでに5校、都内に設置した学校です。

チャレンジスクールについてまとまった資料が見あたりませんが、例えば、平成24年の文部科学省・高等学校教育部会(第6回)で、東京都教職員研修センターの金子氏は次のように述べています。長くなるため要約して引用します(この会議の資料はこちら)。

簡単に言うと、チャレンジスクールとは、小・中学校での不登校や、高校での中途退学を経験しているという生徒が、もう一度チャレンジする学校。三部制の定時制、総合学科。

大きな特色は、学力検査や調査書によらない入学者選抜を行っていること。具体的には、作文や面接を通し、学ぶ意欲を重視している。さらに総合学科の特色を生かし、さまざまな選択科目、あるいは学び直しの科目なども設置している。また三部制ということで、朝、昼、夜、子どもたちの生活のリズムに合わせた時間に授業が受けられるよう編成している。例えば朝の第一部に通う子は、その後の二部、昼の授業が受けられたり、あるいは昼の生徒は夜の時間帯の授業も受けられるなど、柔軟に履修できる。また、カウンセリング機能、教育相談の機能が充実しており、人的にも配置をしており、複数の担任制などもしいている。

それぞれが所属する部の前後に、ほかの選択科目も履修できる。こういう単位履修により、3年間で卒業する生徒の割合が高い。

具体的な特色のある取組については、例えば、大江戸高校では、1年次必修履修の生活実践がある。マナー、あいさつ、礼儀、お客様をもてなす、おはしの持ち方などの授業を行い、2年生では生活とマナーなどの取組をしている。1、2年次は学級担任が2名で対応している。

また例えば、桐ヶ丘高校は、教員全員担任制という特殊な教育相談機能を持たせている。これは、どの先生でも、誰でも、いつでも相談できる。

また、稔ヶ丘高校も特色があり、1年次に全員に履修させる「コーピング」という学校設定科目を設置。大きく2つのねらいがあり、ひとつはコミュニケーションスキル。早稲田大学と共同開発した認知行動療法に基づくプログラムを展開し、コミュニケーションスキルを学ばせる。もうひとつは、学習のスキル。例えば、話したことを箇条書きにまとめさせるとか、こういう基本的な取組をしている。

(略)

課題は、卒業時に進路が決まらない生徒の割合が、全日制の普通科の平均に比べると高い。これらを解決するために、これまでは中途退学防止と学校から離さないということをねらう視点を持っていたが、今後は卒業後の進路の実現をさらに充実していく必要がある。

平成24年3月 文部科学省 高等学校教育部会(第6回)

なお、この発言からすると「チャレンジスクールには、小・中学校での不登校や、高校での中途退学を経験している生徒でなければ入学できない」ように思えてしまいます。しかし、例えば大江戸高校のサイトには次のように記載されており、小平市教育委員会の答弁どおり、「不登校や中途退学を経験した生徒に限定しているわけではない」ことが伺えます。

小・中学校時代に不登校を経験した生徒や、高等学校を中途退学した生徒を含め、これまでの教育の中では自己の能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒など、多様な生徒が学校生活を通じて自分の目標を見付け、それに向かってチャレンジする学校です。

東京都立大江戸高等学校・学校からのメッセージ

東京都のチャレンジスクール一覧(都立高)
学校名所在地年次
ごとの
定員
応募倍率
R1年度R2年度R3年度
六本木高等学校港区180名1.631.751.34
大江戸高等学校江東区1.311.521.16
世田谷泉高等学校世田谷区1.281.261.02
桐ヶ丘高等学校北区1.161.210.97
稔ヶ丘高等学校中野区240名1.481.311.27
(立川地区)立川市180名令和7年開校予定

それぞれ1クラスの定員は30名です。ただし稔ヶ丘高校では、自分でつくることができる時間割として「少人数習熟度別指導」というものがあり、そこでは平均15名から20名程度の授業が行われているようです。

また、東京都立八王子拓真高校には、チャレンジスクールではないものの、同じ流れを汲んだ「チャレンジ枠」という枠が用意されています。

チャレンジ枠を設けている都立高
学校名所在地年次
ごとの
定員
応募倍率
R1年度R2年度R3年度
八王子拓真高等学校八王子市60名1.271.531.16

チャレンジスクールとチャレンジ枠の違いは次のようなものです。

チャレンジスクールとチャレンジ枠の違い(参考サイト
項目チャレンジスクールチャレンジ枠
入試学力検査や出身校の調査書の提出が不要
志願申告書・作文・面接で行う
過程三部制(昼夜間定時制)
方式単位制(学年制なし)、原級留置がない
卒業まで
の期間
4年が基本
3年での卒業も可能
定員1クラス30名
稔ヶ丘高校は少人数習熟度別指導あり
総合学科
*普通科目の他に
選択科目が選べる
普通科
学校内の
クラス編成
全員が
チャレンジ
スクール生
普通枠:8クラス
チャレンジ枠:2クラス
選択科目は両枠の生徒が
同一の授業を受ける

エンカレッジスクールとは

エンカレッジスクールは、東京都教育委員会が、「これまで力を発揮できなかった生徒のやる気を育て、社会生活を送る上で必要な基礎的・基本的学力を身に付けることを目的」として、既存の全日制都立高校を改編して設置した学校です。

平成14年10月の「都立高校改革推進計画 新たな実施計画」で計画され、これまでに6校が指定されています。

エンカレッジスクールの特徴は、『東京都のエンカレッジスクールにみる 学び直しの実状と課題(政策研究大学院大学・2017)』というレポートによれば、主に次の5点あります。

  1. 入学時の知識や技能を問わず、生徒の学びたいという意欲を重視した選考を行うため、入学者選抜で学力検査を行わない
  2. 集中力が保たれるよう、30分授業や習熟度別授業、少人数授業が導入されている
  3. 生徒の興味、関心を喚起するため、体験学習を取り入れている
  4. 成績評価には観点別評価を推進しており、授業態度や提出物、小テストなどを考慮して総合的な評価を実施する。定期テストも当初は行っていなかった。
  5. よりきめ細やかなクラス運営を行うために2人担任制を導入している

*上記レポートには、これ以外にも、エンカレッジスクールの日々の状況が描かれています。

東京都のエンカレッジスクール一覧(都立高)
学校名所在地学年ごとの定員
(データ不足のため
分割前期分のみ)
応募倍率
分割前期分のみ
R1年度R2年度R3年度
蒲田高等学校大田区87名~109名0.761.310.83
足立東高等学校足立区88名~119名1.071.550.91
東村山高等学校東村山市118名1.411.691.50
秋留台高等学校あきるの市110名~131名1.301.341.23
中野工業高等学校中野区63名~97名0.700.950.68
練馬工業高等学校練馬区88名~106名0.941.281.01

チャレンジスクールとエンカレッジスクールの違いは次のようなものです。

チャレンジスクールとエンカレッジスクールの違い
項目チャレンジスクールエンカレッジスクール
募集2月と8月に2回募集
2月は2学年相当以上も
2月に推薦・前期・後期の募集
入試の
学力検査
なし
入試の
選抜方法
・志願申告書
・作文
・面接
・調査書
・作文か小論文
・面接
・実技試験
過程三部制
(昼夜間定時制)
全日制
方式単位制
原級留置がない
学年制
原級留置がある
学科総合学科
*普通科目の他に
選択科目が選べる
普通科・工業科
体験学習ない?設けられている
授業時間45分50分、1年次は一部30分
卒業まで
の期間
4年が基本
3年での卒業も可能
3年が基本
学級担任1年次は2名2名
学級定員1クラス30名以内1クラス33人から40人?

チャレンジスクールやエンカレッジスクールは発達障害の子に適しているか

チャレンジスクールやエンカレッジスクールは、発達障害のことが広く知られる前に計画・設置されています。そのため、発達障害の生徒が十分な支援を受けられる仕組みになっているかというと、そこまで期待できる状況ではないようです。

いずれの学校も、私が調べた限りでは、「発達障害のことをしっかり理解している」印象がありませんでした。一部の学校ではむしろ、「発達障害に分類されるはずの生徒に、不適切な対応がなされているのではないか」という印象も持ちました。

もちろん、発達障害のことをよく理解されており、熱意をもって対応されている先生方もいらっしゃるとは思いますが、前面に見えている状況ではありません。

そのため、願書を出す前に、しっかりそれぞれの学校を調査されることをお勧めします。

発達障害をサポートするために、これらの学校に期待される役割は大きいと思います。都には、合理的配慮の徹底や、教職員の研修を必須化するなど、制度として発達障害を支援する体制を組み入れるよう、早急に対応してもらいたいと願います。

「長期欠席児童・生徒支援シート」について

議会で話題に出てきたものとして、次の3つのシートがあります。

  • 文科省の「児童生徒理解・支援シート
    さまざまな児童・生徒を、統一様式で指導する形式のもの

  • 東京都の「学校生活支援シート
    特別な配慮が必要な子どもについてのもの

  • 小平市の「長期欠席児童・生徒支援シート」
    不登校の子について、東京都の資料をもとに小平市が独自に作成したもので、毎年更新している

小平市では、特別支援と不登校児で同じ様式では対応できないため、これらを使い分けるとのことです。

小平市の「長期欠席児童・生徒支援シート」を見せてもらいました。「長期欠席となった直接のきっかけ」という欄には、14項目くらい選択肢があり、また「その他のきっかけ」という、任意で記載する部分もあります。つまり、「病欠」、「家庭の事情」、「慶弔」の3種類からしか選べない、ということはありませんでした。

こういったシート(の様式)も、本来はすべて公開すればよいと思います。公開していない理由は、推測ですが、保護者から「何を書いたか見せなさい!」といった要求があることなどを過度に恐れているからでしょう。そのような理屈も分かるところはあります。しかし、一方で、「すべて見せてもよい」という前提や信頼関係の中でシートを作成し、それをお互いで確認しながら、話し合えるようにしたらよいのでは、とも思います。

いずれにしろ、「こういった項目で把握していますよ」くらいは、公開しても問題がなさそうですが…。