(1)ディスレクシアの子どもをひとりも見過ごさず成長できる環境整備を、いますぐに
📄会議録まとめ
令和2年2月26日に行った2件の一般質問のうちの2件目です。
保護者の方からご相談をいただいたことからディスレクシアに関して網羅的に質問しました。確率上、小平市立の小・中学校に在学する子どものうち約330人が潜在的に読み書きに著しい困難さを抱えています。しかし判明しているのは56人のみ。この困難さは自分も周囲も気付きにくく、不登校や鬱につながる可能性もあり、早急な対応が必要です。質問に先立って確認したところ、市職員の部課長レベルであっても、障害のことや問題があることを把握している人は少ない状況でした。そこで今回 は職員や議員への周知をひとつの目的に質問しました。以降の一般質問でも続けて2回(①、②)取り上げています。また、その過程で学んできたことをこちらのページにまとめています。
残念ながら答弁は的を得ていませんでした。障害の発見を教員の気付きだけに頼ろうとする(よくない)方針があることも分かりました。一方で目的のひとつだった周知はある程度達成できたと思います。この一般質問の後、職員の研修に読み書き障害のことを組み込んでもらえることにもなりました。またこれ以降2回続けての一般質問やそれ以外の場面でもテーマとして取り上げているうちに徐々に市側の答弁も変わって来るのを感じています。保護者の方が特別支援推教育進委員会の委員として参加され、積極的に問題を指摘されていることもあり、職員の認識や意識も変わってきているようです。歴史を見ると継続性が重要なことは明らかですので、今後も継続して取り組みます。
質問 | 答弁 |
---|---|
市立小・中学校在籍のディスレクシアの児童・生徒数推計は? | 一定数あると認識 |
実際にディスレクシアと診断された児童・生徒数は? | 把握していない |
読み書き困難な児童・生徒数は? | 特別支援教室利用児童48人 巡回相談で報告の児童・生徒が8人 |
潜在的な児童・生徒数の見積もりは? | 割合は5.0%や10%など一定数あると認識 |
保護者の方々と特別支援教育のガイドラインを作っては? | 研究課題にする →その後ガイドブックができました |
ディスレクシアの児童・生徒を見過ごさないアセスメントは? | 統一したアセスメントは未実施 |
統一したアセスメント未実施の理由は? | 気付きの中でチェックし巡回相談に |
小平市に統一したアセスメントを実施している学校はあるか? | 把握していない |
統一したアセスメントの計画もない? | 教員の気づきをもとにアセスメントにつなぐ |
特別支援申請時に行うアセスメントだけでは足りないが? | 教員の気づきの分析コードや質を高める |
稲垣先生に協力を仰ぎ統一アセスメント構築チームをつくっては? | 特別支援教育推進に向けた検討進める |
教育現場でディスレクシアの周知徹底はどう実施? | 発達障害や学習支援の研修で |
研修内容を市のサイトにアップロードし共有しては? | eラーニングがあり、教員の分析コードを深める |
ディスレクシアへ合理的配慮の現状は? | プリント工夫、タブレット 使う学校も |
デイジー教科書の再生装置は無償提供される解釈か? | 物的配慮は進める必要ある |
研修資料作成に当事者含めては? | 機会捉え、内容等見直しの際さまざまな声を聞く |
通告書
主な質疑
正確な質疑内容は会議録をご参照ください。
なお実際は理事者側の答弁すべてが敬語表現でなされています。ここでは簡略化のため敬語表現を省いています。
①質問する理由
ディスレクシアは周知不足
見えない障害と言われるディスレクシアは、読みと書きの学習に大きな困難を抱える学習障害の一つ。この障害について十分に周知されているとはいえず、実態も適切に把握されていない。
当事者の子どもたちは「自分は頑張っても勉強ができない」と誤解したり、周りから「勉強が足りない」と誤解を受けて苦しみ、不登校や鬱病に至る場合もある。
文部科学省の調査によると「読む」または「書く」に著しい困難を示す子どもの割合は平成14年時点で2.5%、平成24年時点で2.4%。
たとえば小平市立小学校の令和元年5月時点での通常学級児童数9,731人で計算すると、200人以上が苦しんでいる可能性がある。しかし問題は表明化していない。
授業でのタブレット使用状況(この時はGIGAスクール構想はまだ実現していませんでした)などから考えれば、適切なアセスメント(客観的評価とそのプロセス)が行われていないために見過ごされ、人知れず学校が嫌いになっている子どもが多数存在する可能性が高い。
実態の把握はもちろんのこと、ゆとりのある環境整備と、少なくとも教育現場における周知徹底が早急に必要。
見えない障害である学習障害は、ほかにも「聞く」、「話す」、「計算する」、「推論する」に困難さを感じるケースもあるが、今回は論点を集中させるためディスレクシアに限定する。
またディスレクシアという用 語には広義の意味があるため、ここでは読み書きに障害があると診断された、もしくは診断を得ていなくとも著しい困難を感じている状態または人とする。
ディスレクシアに関してはこれまでも議会で何度かデイジー教科書との関連で取り上げられている。しかし(市職員のうち)管理職においてもピンとくる方はまだ少ないようだ。
障害の状況
読み書き障害の状況は人によってさまざま。通常文字を見るとその読みが自動的に頭に浮かぶ(音韻処理という)が、読むことが困難な方の場合はそれが自動化されず、たとえば次のような状況がみられる。
- 一文字を読むのに時間がかかる
- 文字を読み間違える
- 読むだけで疲れてしまい、意味を理解できない
また、書くことが困難な方でも次のようにさまざまある。
- 単語の文字が足りない
- 文字が入れかわる
- 文字の左右が逆になる
- 漢字の部首が入れかわる
- 漢字の部首がなくなる
気付きにくい障害
これは本人も周りの人もなかなか気付きにくい。たとえば学校の生活では次のようなこと一つ一つに困難さがある。
- 紙の教科書や紙の辞書を使う
- テストで問題用紙を読み、解答用紙に書く
- 先生の板書をノートに書き写す
しかしなかなかそれが表面化しない。理由のひとつとして、ディスレクシアの子どもは知的に障害がなく、記憶力が優れているか鍛えられている場合がある。また小学校に入学して最初のころの授業は、先生の話を聞いていればどうにかなってしまうことがある。
そのため自分も周りも障害があることになかなか気付かない。しかし、読めない、書けないことから、本人は無意識にストレスを感じ、読み書き自体を避けるようになる。
すると周りからは「この子は怠けている」とか、「勉強する気がない」などと見なされてしまい、やる気をなくしていく。
つまりこれは周りから気付かれにくいものの、けっして一人も見過ごしてはいけない。
迅速に対応する必要がある
今回、小平市の学校に通うディスレクシアであ るお子さんをお持ちの保護者の方からご相談を受けたことがきっかけで質問している。
その方にたくさん教えていただいた。私も具体的なことはまったく知らなかった。調べていくうちに、これは個人の問題だけではなく、小平市全体の問題であり、主に次の2つの理由から、とにかく早く対処しなくてはならないことが分かった。
理由1:多くの子が取り残されている
まず潜在的な人数の多さ(に着目する必要がある)。通告書に書いた「文部科学省の調査」とは、平成14年と平成24年に行われた『通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査』のこと。
つまり18年前と8年前の2回、文科省が大規模な調査を行っている。調査対象は公立小・中学校の児童・生徒で、それぞれ人数は約4万人と5万人であり、統計的にも十分な母数の調査であった。
この調査の結果、「読む」または「書く」に著しい困難を示す子どもの割合は、10年経ってもほぼまったく同じ割合で 、2.4%~2.5%であった。2.4%を使って計算すると、小平市立の小・中学校では合計約330人になる。
| --- | --- | | 平成14年調査 | 2.5% | | 平成24年調査 | 2.4% | [「読む」または「書く」に著しい困難を示す子どもの割合]
🏫 令和2年5月時点では約340人
児童・生徒数が増えたため、令和2年5月1日時点では約340人になります。
小平市立小学校10,072人 + 小平市立中学校4,083人 = 14,155人
14,155 × 2.4% = 339.72人
330人は結構な人数。潜在的人数がこんなに多いのに問題が表面化していないのはなぜか。「人知れず不登校になっている子どもたちがいる」のではないか。