メインコンテンツまでスキップ

土地取引、土地利用における条例軽視は、まちづくりの根幹を揺るがす大問題

まとめ

令和元年9月6日に行った1件の一般質問です。

回田町の宅地開発に関して周辺住民からのご相談を受け、数か月に渡って複数の議員で調査をしました。私たちの会派に相談いただいた時は時すでに遅しのタイミングでしたが、今後市の開発のあり方を見直す必要のあることが分かりました。ほかの議員もこの件で質問しました。私の質問では、条例違反が起きていたことや理念が守られていないことなどを指摘し、市の姿勢を確認しました。旧佐川邸公園の件もそうですが、市は市内公園の扱いに関し課題を抱えています。市長にも期待できないところがありますので、私たち市民が実現可能な発想を持ち込み、提案していく必要があるようです。

質問答弁概要(クリックで詳細)
元の土地所有者が条例違反行為をしたということでよい?よい
仲介人の農協が土地元所有者に説明しなかったのか?市として説明したと認識
条例違反に罰則は?罰則はなく勧告はあるが、悪意なしとみてそこまでいかない
条例違反があったのに罰則がなく農協にも調査しない、条例軽視では?罰則は設けない
条例の解釈に理念を反映させるのは市長の仕事では?その姿勢でやっている
小さな公園つくりたくないのでは?効率的維持管理は悩み。不必要とは考えてない

通告書

主な質疑

以下の質疑は要約です

正確な質疑内容は会議録をご参照ください。
なお実際は理事者側の答弁すべてが敬語表現でなされています。ここでは簡略化のため敬語表現を省いています。

質問する理由

まちづくりの根幹が崩れる

回田町218番地周辺で行われている宅地開発に関し、大規模な開発にもかかわらず公園が設置されないことや一連の取引、開発に関する説明が十分になされていない。そのため周辺住民の間で市に対する不信不満の声が上がっている。特に若い家族世帯が多く移り住んでいる状況で、子どもたちの遊ぶ公園が近隣にないことや緑が減ることについて心配する声が大きい。

この土地はもとの所有者が平成28年7月1日に全体で約8,000㎡の土地を3つに分割し、それぞれ3,000㎡未満の契約として3社へ売却したもの。この3社との取引(以下、当取引と呼ぶ)は同一の者が行う合計面積5,000㎡以上の土地取引行為であった。しかし小平市開発事業における手続及び基準等に関する条例(以下、条例と呼ぶ)で定められた届出が期間内にされていない。

また大規模な土地利用を小平市の都市計画マスタープランの方針等に照らし合わせるため規定されている小平市土地利用審議会での審査や、市長の助言プロセスも行われていない。さらには事業面積が5,000㎡以上の開発事業で同一の事業者が開発する場合に必要な大規模開発事業のプロセスや、同様に3,000㎡以上の開発で必要とされる中規模開発事業のプロセスも踏まれていない。先述したように都市計画法の規定に基づいて3,000㎡以上の開発において整備すべき公園等も設置されていない。

5,000㎡を超える大規模土地取引及び大規模土地開発に際し「複数業者との間で土地を分割して売買する」などの手法で個々の土地面積を減らし法や条例を回避できてしまうなら小平市のまちづくりの根幹が崩れる。非常に大きな問題だ。

そこで、当取引に関する市の対応の再検証と、東京都への働きかけも含めた条例等見直しの要望を念頭に質問する。

①大規模土地取引の届出に関する条例違反について

経緯、原因、対処、再発防止策は?

大規模土地取引の届出は取引契約の3か月前に行われなければならないが、当取引は契約締結後1か月での届出と遅れたことについて、その経緯、原因、市としての対処、再発防止策は。

平成28年1月に、市は、土地所有者の仲介人から生産緑地であった土地について売買の相談があったため、大規模土地取引行為の届出や大規模開発事業に関する公共施設の設置等について説明をした。

その後、同年7月に、土地を3つに分割し、取得した3社から、国土利用計画法に基づく土地取引の届出があった。当該土地につきましては、すでに土地売買が行われていたことから、市から大規模土地取引行為についての届出を促し、同年8月に提出された。

本来ならば、大規模土地取引行為を行う前に市長の助言等を行う必要がある。しかしすでに契約が締結されていたことから、もとの土地所有者に対し良好なまちづくりへの協力を取得した3社に伝えていただくようお願いした。届出がおくれた原因としては、3つに分割して売却したそれぞれの土地面積が5,000㎡未満であったことから、もとの土地所有者が大規模土地取引行為の届出は不要であると自ら解釈をしたもの。

今後の対応としては、大規模土地取引行為の届出について現在市のホームページや窓口のチラシ等で周知をしているが、譲渡人や譲受人が届出を行うことが原則となることから、生産緑地の買い取り申し出があった際や事業者が窓口に相談へ来た際、必要となる手続についてより一層丁寧な説明を行っていく。

条例違反があった、でよい?

5,000㎡以上の土地を売却する際、売り主は売却契約の3か月前に届出をしなければならないと条例で決められている。しかしこのケースでは届出が期限内になされなかった。つまりもとの土地所有者による条例違反の行為が行われたということでよいか。

ご披瀝のとおり、大規模土地取引行為は契約の3か月前までに市に届出ることが条例で義務づけられている。それが出ていなかった。条例は守られていなかった。

届出がおくれた理由は、分割売却したそれぞれの土地面積が5,000㎡未満だったので、もとの土地所有者が届出は不要であると解釈した、という答弁だった。条例を読めば分かるが、ここは分割売却とは関係のない話。

📘大規模土地取引行為の届出は分割売却でも必要

条例と施行規則に次のように書かれています。今回は、売る側が同一であり、規則で定める期間(1年間)以内の売却なので、大規模土地取引行為の届出が必要となります。逆に言えば、1年間を超えて分割売却すれば、大規模土地取引行為の届出が不要になってしまいます。

条例 第6条(大規模土地取引行為の届出)第2項

5,000平方メートル未満の土地取引行為であっても、一団の土地及び隣接した土地において、同一の者又は規則で定める関連性が認められる者が規則で定める期間に2以上の土地取引行為を行うときは、これらの土地取引行為は一の土地取引行為とみなし、その合計面積が5,000平方メートル以上となる場合は、前項の規定を適用する。ただし、市長が適当でないと認めるときは、この限りでない。

条例施行規則 第7条(関連性が認められる者)

条例第6条第2項の規則で定める関連性が認められる者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。ただし、市長が適当でないと認めるときは、この限りでない。

(1)それぞれが親会社等(略)、子会社等(略)又は関連会社等(略)の関係にある者

(2)それぞれが親会社等を同一とするグループ会社の関係にある者

(3)それぞれの役員(略)の全部又は一部が重複している者

(4)前3号に掲げるものに準ずる関係にあると市長が認める者

条例施行規則 第8条(一の土地取引行為とみなす期間)

条例第6条第2項の規則で定める期間は、先行する土地取引行為の完了日(略・登記を行った日をいう。)前又は完了日の翌日から起算して1年以内とする。

土地を売る側が出す届出なので、購入側で複数に分割されていようとまったく関係ない。この認識でよいか。また、市長が適当でないと認めたのか。

その認識でよい。事前相談があったとき、市として、今後、大規模土地取引行為の届出が必要になると指摘していた。その後、勘違いされ、分割してすでに契約してしまった。

市もそのことについては注意し、その後、要望書として出している。なお、市長が特に認めたということではない。

農協から経緯は聞いている?

平成28年1月に生産緑地買い取りの申請があった際、仲介人の農協に説明している。ただ、それがもとの土地所有者の方にはちゃんと伝わっていなかった。

生産緑地の買い取り申請からだいたい半年たって突然、国土利用計画法に基づいて土地を買ったという届出が3社から出た。そこで初めて市は大規模な土地の売却が行われたということを知った。

ということは、仲介人の農協が、ちゃんともとの土地所有者に説明していなかったということになる。そのあたりの経緯は聞いているか。

市はそこまではタッチしていない。あくまでも事前相談のとき、今後必要になると、きちんと説明したと市は認識している。

その後契約が行われ国土利用計画法に基づいての届出がなされた。そこで市は初めて知った。市は、督促ではないが連絡し、至急出してほしいということで、その結果大規模土地取引行為届出書が出された。

条例違反に罰則は?

この条例違反に対し、罰則はあるか。

罰則はない。条例の中で大規模に関する事項については勧告という行為がある。しかし今回遅れてはいるが、勘違いされ、出されているので悪意はないと思い勧告まではいかないと考えている。

条例違反がわかった時点では何もできず、さらに問題が発覚しているのに、農協のほうに調査していない。指導どころか調査もしなかった。これは条例の著しい軽視では。

これまで届出がなかったケースは?

届出が今まで行われなかったケースは、これまで何件あるか。

平成30年度から平成24年度までに出た届出15件のうち、今回の回田町以外に1件あった。

今まで1件あって、特に対処はしていなかったのか。

その1件は、病院の土地で、経営が変わったことによる。病院自体はそのまま引き継がれてやっているため、市長の助言、指導等は行っていない。病院の経営が変わったところで、少し見過ごしていたこともあり遅れた。

今回のケースが許されると「条例を無視しても大丈夫」となる可能性がある。今回の件は、農協に状況を調査して、ちゃんと報告してもらいたい。

事後の罰則が必要では?

勧告は、届出をしていないということが判明して初めてできる。つまり、期限が到来するまでの間に市はチェックができない。期限が過ぎてから届出したものは、事後の罰則を与える必要があるのではないか。

市の行政指導という中では、罰則まで設けるのはなかなか厳しい。

今後の改善については、大規模土地取引行為の届出をする提出者からは当然(?)相談されるので、今後はより明確に説明するとともにある程度その予定日を聞きその予定日に近づいたら、その辺は少し啓発を図るとかそういったことはできると考えている。

勧告に従わなかったケースについては罰則を与えている。なぜ今回のケースで罰則が与えられない判断になるか。

📘 勧告に従わない場合は罰則がある

小平市開発事業における手続及び基準等に関する条例 第41条には次のように書かれています。

市長は、大規模開発事業主等が前条第1項の規定による勧告に従わない場合は、当該大規模開発事業主等に対し意見を述べる機会を与えた上で、氏名等、勧告の内容及び当該勧告に対する大規模開発事業主等の対応の内容を公表することができる。

勧告をしたにもかかわらず、たとえばそれに耳を貸さないとか、出さないとか、そういった場合に名前を公表する。次の手段があるということでの罰則。あくまで勧告→名前の公表という形で規定に設けている。

事前に出してくださいと言っているにもかかわらず期限内に出していないわけで、同じ話では。

これでは都市マスを大規模土地開発に反映できない

土地取引行為の事前届出になぜここまでこだわっているかというと、小平市の都市計画マスタープランを大規模土地開発に反映させるため。

届出が出ると、小平市の土地利用審議会が審議し、その取引に関して市長から助言できる。

なお、小平市土地利用審議会は現在5人で構成されている。議事録を見ると、土地利用構想についてはあったが、土地取引行為については見当たらない。

②小平市土地利用審議会について

メンバー構成は?

小平市土地利用審議会のメンバーは。

メンバーは、

  • 都市計画にかかわる民間会社の代表の方
  • 建築にかかわる民間会社の代表の方
  • 弁護士
  • 財団法人の不動産関係の仕事をされている方
  • 学校の関係者

最近はいつ開催でどんな助言が?

小平市土地利用審議会は最近いつごろ土地取引行為について活動し、市長からどんな助言が行われたか。

本年6月ごろに元自動車教習所跡地の大規模土地取引行為の届出があり、本年8月上旬に小平市土地利用審議会を開催している。8月下旬に助言を交付し、主だった内容は:

  • 周辺には幼稚園や戸建て住宅、マンションの住宅があることから、周辺の住宅環境等に十分配慮した計画とすること
  • 公園、緑地などオープンスペースの整備を図って防災機能の向上に努めること
  • 歩行者空間の確保や周辺の交通状況を踏まえた交通安全対策に配慮すること
  • 周辺住民も含めた交流を図ることができる地域コミュニティーの創出を図ること
  • 譲受人が助言内容を遵守するよう責任を持って引き継ぐこと

今回は、土地取引行為の届出が遅れ、小平市土地利用審議会から助言を与えるプロセスが省かれてしまった。大規模な土地開発において都市計画マスタープランを反映するというひとつの機会が失われてしまっている。まちづくりという観点から見ると、とても大きな問題。

③条例の目的や理念が軽視されている

条例の成り立ち

もうひとつ大きな問題は、この土地開発に関する一連の対応で「条例の目的や理念が軽視されている」と感じるところ。

条例には目的や理念がある。この条例に関しても、第1条(目的)や第3条(市の責務)に書かれている。

📘 条例の目的や理念

第1条(目的)の概要:開発事業の着工前に必要な手続及び公共施設等の整備等に関する事項を定めることにより、小平市都市計画マスタープランの目指す良好な住環境の形成及び安全で快適な都市環境を備えた市街地の形成に資することを目的とする。

第3条(市の債務)の概要:市は、都市計画マスタープランの実現を目指し、安全で快適なまちづくりに努めるとともに、まちづくりに関する施策を積極的に講ずるものとする。

つまり、市は、開発事業が行われる際、まちづくりの理念やビジョンがその開発に反映されるように努めなくてはならないとされている。今回の条例違反は、こういった理念に反している。もし開発業者の短期的な利益追求で開発事業が行われると、理想的なまちづくりはできない。

一方、法や条例は、複数の意味に解釈できるところがある。ある程度の遊びを持たせるようにはなっていると思う。

そのため、逆に、条例の背景にある目的や理念、町をどうしていきたいかというビジョン、そういうものが重要になる。それらに基づいて条文を解釈しなくてはならないし、条例のほうに目的や理念やビジョンにそぐわない部分があれば、改正しなければならない。

市の条例は、そういうふうに成り立っていると考えてよいか。

ご披瀝のとおり、都市計画マスタープランの目指す良好な住環境の形成と、安全で快適な都市環境を備えた市街地の形成に向けて都市計画行政を進めている。その理念にかなっているものと思っている。

1. 条例違反

その目的や理念、ビジョンに反することが今回複数起きている。この条例違反を筆頭に4つぐらいある。1つ目はこの条例違反。

2. 3社に分割販売を看過

2つ目は、ほかの議員も指摘している「3社に分割して販売した件」について。市の調査では3社に関連性が認められなかったが、私たちのほうで調べたら3社に関連性はあった。

仮にこの3社にまったく関連性がなかったとしても、全体として大規模な開発であることに変わりはない。条例の理念を重視すれば、そこに小平市のまちづくりを何とかして反映しなければならない、そう考えるはずではないか。

ご披瀝のとおり大規模土地取引行為について条例は守られなかったが、そのほかのことについては市は基本的には条例のとおりに指導もしてきたし運用も含めて理念にかなった指導をしていると考えている。これからもそういう形で、より丁寧に指導していきたい。

条例の理念に沿って今回何が行われたか。市長から元土地所有者の方へ届出が遅れた後に、市長の助言ではなく次のような内容のお知らせを送っている。

今回売却されました土地の利用につきましても、周辺の住環境に配慮した一体的な計画となりますよう譲受人に対してお伝えいただき、良好なまちづくりへの御協力をお願いします。

それだけ。先ほどの小平市土地利用審議会で出てきた市長の助言内容と、ずいぶん違う。

市長のお知らせが送られた後は、開示された資料を読む限り、一体的な計画という話はどこかに行ってしまい、買った3社の言い分である、個別の開発ですという言葉の言いなりになってしまっている。

市は、この開発行為に関して、2段構えの論理で「一体の開発ではない」ということを固持している。1段目の守りは「関連会社」のところ。これはほかの議員の質問にあったとおり。

2段目の守りは、「東京都が決めた区域で東京都が許可を出す開発事業であって、市は同意をする立場なので、小平市が決める区域で事業の一体性の判断をすることは運用上していない」という論理。つまり東京都に責任があるので、小平市としては介入を諦めるという態度。これはまさに小平市独自のまちづくりを進めていこうという条例の精神に反した行動。

東京都が許可を出すと言っても、その前に調整会議があるので、その場で調整すればよい。実際、東京都に確認すると次のような回答だった。

開発の東京都の区域どり、つまり都市計画法第29条の開発の区域どりと、市の条例による区域どりというのがそれぞれ独立しているため、東京都の区域どりと市の区域どりが異なるという可能性も考えられる。そういった協議もきちんと済んだ上で、同意の書類とかもつけて、第29条の申請を行っていただくという流れになる。周辺の開発を一と見るのかどうかということは、市の判断による場合もある。

筋が通った話だと思うが、何か意見はあるか。

市は、過去から、東京都とその辺を調整しながら、東京都の考えなども把握して進めてきた。東京都の判断も仰ぎながら、都市計画法第29条という一番大きな法の中の考え方に基づき執行してきている。

なぜか私たちが調べると、関連性のことも、第29条の区域どりの話も、まったく逆の答えが出てくる。そのような根拠に基づいて、業者の論理を固持している。条例の理念に反すると思う。

3.市民とともにまちづくりしていない

理念に反すると感じる3つ目は「事業者が市民とともに行うまちづくり」の項目について。条例の第5条に次のようにある。

事業主の責務について、安全で快適なまちづくりを推進するため、開発事業を行うに当たっては、その内容を都市計画マスタープランの方針に適合させ、自らも地域社会の一員としての社会的使命を自覚し、市民とともにまちづくりを行うものとする

つまり、事業主は市民とともにまちづくりを行う必要があるとされている。

では、どう市民とともにまちづくりを行っているか。事業主が市民と接したところは、大規模開発ではないが、小平市開発事業における手続及び基準等に関する条例の第18条に次のように規定されている。

事業主は、規則で定めるところにより、周辺住民に対して開発事業の計画内容、工事方法等について説明会の実施等の方法により説明しなければならない

普通に考えると、どこかの会場を借り、住民と業者が意見交換できるような場を設けるのだろうと。少なくとも私はそう考えた。

しかし、実はそういう説明会ではない。今回の最初の開発に関する住民説明報告書を見ると、周辺の115世帯を戸別訪問し、70世帯はお知らせをポストに投函しただけ。60%の世帯にはポスト投函しただけ。しかも業者の自己申告で、115世帯すべてで質疑は一切ないとしている。これで「市民とともにまちづくりを行った」ことになっている。

今こんなに問題になっていることを考えると、住民に対する説明が足りていなかったことは明らかだ。

住民説明の項についても、見直されてしかるべき箇所だ。大規模開発として認定されていれば、もっと住民の意見を集める機会が得られる仕組みにはなっているが。

4. 消防水利施設の設置に向け努力していない

条例の理念に反すると感じる4つ目は、消防水利施設の件。小平市開発事業における手続及び基準等に関する条例の第33条小平市開発事業における手続及び基準等に関する条例施行規則の別表6)に次のように書かれている。

3,000㎡未満の開発事業にあっては、設置する防火水槽の規模及び数量について協議すること

今回は3つに分割されたから3,000㎡未満でこれが該当するはずだが、協議報告書の「事業主の希望」欄に、

今回の事業計画は3,000㎡未満で公園を設置しないため、防火水槽、採水管、消火栓は設置しません

と書いてある。そして、そのすぐ下の合意事項欄には

上記内容に合意します

としか書かれていない。きちんと協議したのか非常に疑問。

先日ほかの議員の質問に対し「小平市内では消防水利の不足地域がある」と答弁していた。そういう状況の中、しかも一体の開発をお願いしますと事前にお願いし、お知らせしている状況にもかかわらず協議報告書では相手の言うことをすんなり受け入れてしまい、防火水槽は必要ないと同意している。

実際はもっとやり取りがあったのか。一体の開発をお願いしますという前提のもと、開発業者に消防水利の設置の働きかけは行ったのか。

市長の助言では一体の開発をお願いするということではない。大規模土地取引行為を行おうとする者に対し、都市計画マスタープランに沿った良好な住環境の形成を目的としてより広い視点での一体性のあるまちづくりへの協力をということ。

開発区域を一体でとってほしいということではなく、道路の接続や緑地の配慮など、周辺との調和をとって、全体としてまちづくりを行ってほしいという趣旨でお願いしている。開発区域を全体でとれというようなところではない。

防火水槽については、その時点では、全体のまちづくりということだけだったので、協議までには至っていない。

大規模な土地に関しての一体の開発だったのではと思うが、地域として一体の開発であったとしても消防水利は不足している。協議の上、そういったものを設置してくださいという、まちづくりの方向性を反映する必要がある。

結局市長の責任、どう考える?

こうした条例の理念に反することが複数起きている。中規模開発や大規模開発も、ちゃんと理念にのっとって条例を解釈してやっているのか、疑念が湧く。

ただ、職員の方々は間違いがないよう頑張っている。市民への悪意を持ってしていることではないだろう。

では、なぜ条例を解釈するとき、目的や理念や市のビジョンを忘れてしまうのかというと、これは市長の仕事だから。会社なら、職場にビジョンを浸透させるのは社長の仕事。(市では)首長たる市長の仕事ではないか。市長はどう考えるか。

私も担当の課も、条例に基づくビジョンや理念は、忘れているわけではなく、それに基づき指導している。そういう認識で事業者とも住民とも接しているつもり。

私はもともとライフワークが環境問題。その姿勢は変わっていない。今回の問題も起きた段階で、部長のほうにすぐ来てもらい。役所というのは民民(民事)不介入で、どちら側にもつかないというのが立場だが、我々の仕事は19万市民のため、いかに安全で安心な町あるいは潤いのある町をつくっていくのかということ。市民の側は何十年に一回あるか、ないか、こういったことに巻き込まれるが、ほとんどずぶの素人。条例や法に日々接するわけではない。彼に言ったのは、小平市の目指す方向性に沿って、我々は法を犯すことはできないが市民の側に立ち、できるだけ力をかしてあげなさいと。役所は市の理念に沿い、できるだけ市民の皆さんの期待に応えられるように努力して指示している。今も頑張っているし、市民の皆さんとの協議もまだ継続中と聞いている。そういう意味ではぜひ御理解いただければと思う。

市長は、市民が今回何度も市役所へ足を運び複数の議員とともに担当課のやり取りを重ねたりとか開示請求を行っていたりするのに、条例違反から始まった今回のケースで市民との対話の現場には出てこないものなのか。

基本的には、担当課である都市計画課が誠意を持って対応している。課長を筆頭に、意見交換会にも参加し、話し合いしている。

事業者の言いなりでは理想的なまちづくりは無理

業者の立場では、大規模開発となることを避けることで、たとえば次のような大きなメリットがある。

  • 公園をつくらなくてよい
  • 大規模開発の手間のかかるプロセスを省ける
  • 消防水利もつくらずに協議だけで済ませられる

大規模開発を避けたほうがよいというインセンティブが働く。それに対し、市のまちづくりを大規模開発事業に反映させていくには、うまい仕組みや大きなエネルギーが必要。

市長を初め、ビジョンをなし遂げるという情熱を持って取り組み、特に今回の検証。また東京都の言いなりになるんじゃなく、東京都への働きかけも含めて条例の見直しを早期に実施してほしい。

今回の件はまだ続いている。3社への株主状況の報告依頼も含め、真摯に対応してもらいたい。

土地取引行為の届出時は市民へ情報提供を

また、大規模な土地取引行為が行われたという事実は、その時点で周辺住民や市民がチェックできない。今回も開示請求で初めてわかった。今後同様なことが起きる可能性もある。大規模土地取引が行われたという情報、土地の場所、どの会社に売却されたかを、個人情報は隠しつつでも、公開してほしい。

大規模な土地開発が行われる前兆なので、以降のプロセスで必然的に巻き込まれていくよう、周辺住民の注意喚起にもつながるよいことだと思うがどうか。

ある程度商取引等に影響を与えるため、すぐ公開というのは難しいと思うが、その辺の情報提供については、今後研究課題。

小さな提供公園が増えることをどう考える?

維持管理費用の問題から、市は小さな公園をなるべく増やしたくない動機があると聞く。今後大規模な生産緑地の宅地化が進む過程で都市計画法の規定による公園等が増え、このままでは維持管理費用が増大する可能性も高い。市はこの問題をどう捉えており、どう対応する予定か。

宅地開発による提供公園が増加していく中で維持管理費用の増大は課題と捉えており、植生管理費の対策として、比較的成長が緩やかで巨木化、高木化しない樹木の選定をお願いし、剪定費用の削減に努めている。また、公園ボランティア制度やアダプト制度を活用し、市民との協働を図りながら、公園の美化や維持管理ができるよう進めていく。

上水南町の旧佐川邸公園の件でも、市からは公園をつくることに対し積極性を感じない。市が市民に「小さい公園はつくりたくない」と伝えたという話も聞いた。提供公園はつくらない方向にバイアスがあったのではないか。

しかし、今回の、合計で500㎡の規模はけっして小さくない。

インターネットを検索すると、政策研究大学院大学の方が書かれた『開発許可制度における提供公園の影響に関する研究』が出てくる。川崎市の、1,035個の公園を対象とした検証で、次のような結果。

  • 200㎡以下の小さな公園は、周辺の地価について有意にマイナスの影響を与える
  • 200㎡から500㎡の中規模公園は、周辺の地価に有意にプラスの影響を与える

ある程度の広さの公園であれば、イベントを行うことや避難場所としての機能、トイレ等の施設の充実等、しっかりした遊具の設備など周辺環境にプラスの要素を多く有すると書いてある。

公園の存在が周辺の地価や人口動態に及ぼす影響を調べている?

公園があることで、周りの地価や人口動態にどう影響を及ぼすかの調査を、小平市でも行っているか。

調査は具体的には行っていない。なお、小さな公園を市がつくりたくないということはない。たくさんある公園の維持管理をいかに効率的にやっていくか、常に頭を悩ませているが、公園は市民のレクリエーション活動、健康運動、文化活動の場となるとともに大きな環境を守るための貴重な空地。そういったものに対し必要ないということは考えてはいない。

公園数増加による維持管理費増大への方策は?

小さな公園をつくりたくないとは、なかなか言えないと思う。しかし実際に財政上は維持管理費がかかる。公園の予算として、維持管理費は全体で約3億円。提供公園が増えるとコストも増える状況。

自動的に増えても、都市公園法があり、防火水槽があり防災上の理由からも、公園を容易に減らすことはできない。そうすると次のようなことを検討するのではと。

  • 公園の質を変える
  • 清掃業務等の委託業務費を抑える
  • 公園の用途を変える(自転車駐輪場と併設など)

巨木化、高木化しない樹木の選定を業者に依頼する方向は、公園の質を変えることに当たる。ほかにも何かアイデアはあるか。

樹木に対する周辺住民の方の苦情が非常に多い。目隠し機能が求められていたとき、そういった形の公園をつくった。そうではなく、シンボルツリーのような形で、真ん中にその機能を持っていくようなことで、維持管理費を抑えることは考えている。

④アダプト制度について

現状、課題、推進策は?

住民のためになる公園づくりは住民との協働が不可欠。協働の代表例として、市におけるアダプト制度の現状、課題、推進に向けた具体的な活動は。

公園等アダプト制度は、平成28年度に開始して以降、現在、9団体が7つの公園で活動している。現時点での課題としては、多くの団体において活動の頻度が確保されていないことがある。今後も、ボランティア登録している団体や個人への参加の働きかけのほか、広報などでアダプト制度の浸透を図っていく。

報酬を出しては?

アダプト制度の課題に、活動の頻度が足りていないということがある。これを、たとえば、人数をとにかく増やし、1団体当たりの活動頻度が低くても全体として一定の活動頻度が得られるようにする方法がある。

報酬を出し、たとえば有料のごみ袋、エコダイラポイントを与える。稲城市でも報酬を与えている。市民活動ポイント制度というもので、ポイントがもらえ、現金に還元できる。小平市でもそういうことをするか。そもそもなぜ無償にしているのか。

アダプト制度は里親ということ。愛着を持ち、その公園を自分たちが自由に管理をするということなので、報酬自体については当市は考えていない。

制度の情報提供を

稲城市は非常にアダプト制度が進んでいて、現在、71団体ぐらい活動している。ホームページの情報も十分。小平市のホームページにはアダプト制度についての話が詳しく書かれていないが、どう考えているか。

小平市のアダプト制度はまだ生まれたばかりで、これから発展をさせていく。ホームページに載せるべきネタが少ない。昨年4月に市報1面へ紹介し、啓発した。

それ以前の段階で、アダプト制度とは何か、参加するとどうなるかという、すでに分かっている情報も載っていない。掲載してもらいたい。

別名称を公募しては?

『アダプト制度』は分かりにくいので、別の名称をつけて、その際たとえば懸賞つきの公募をするなどの方法は考えているか。

いろんなアイデアはあると思うが、今は活動している9団体が実績を積んいただくことが一番重要。その中で知恵を出し、言われたようなことも検討していきたい。

大規模開発事業が行われる際は、まちづくりの理念がきちんと反映されるよう、市長にビジョンを示してもらい、庁内に浸透させる。条例の解釈において職員が同じ方向を向けるよう、変に解釈上の問題で悩まず仕事ができるよう、全体的な流れの中で、一つ一つの事例にしっかり対応していただきたい。

以上