(2)いじめの対応を見直し、教育長への手紙を設けよう
📄会議録を見るまとめ
令和4年3月4日に行った3件の一般質問のうちの2件目です。
いじめ被害についてご相談を受け、市のいじめ対応について調べました。いじめに対しては、①発生しないようにすること、②発生したら迅速かつ適正に対応すること、の2本柱で対応しているものと思います。①については「子どもたちをまるで監視するかのような状況」という声もいただいており、今後調べたいと思います。今回は、②の、いじめが発生した際の対応についてです。市教委や学校が機能不全を起こしていることが分かりました。
いじめの対策において、「重大事態」という取り扱いがあることも分かりました。重大事態の扱いになると、教職員が個々人で対応するのではなく、第三者で構成される組織が対応することになります。このしくみは、子どもたちを守るだけではなく、保護者、先生方、教育委員会のためでもあると私は考えています。しかし、重大事態について、教育委員会や校長、教員への周知や理解が進んでいません。
そこで、この質問では、重大事態とは何かを説明しながら、現在の対応の問題点を示し、具体的な改善案を提示しました。質疑の時間が足りなかったため、次の6月定例会でも重大事態について取り上げる予定です。
教育委員会全体として、重大事態の重要性を認識していないことが分かる答弁でした。継続して取り上げます。
- pointer:令和4年6月定例会で、引き続き追求しました
また、重大事態も含めたいじめ対応について、インターネットを検索しても、よいフロー図が見つからなかったので、つくりました。
- book:重大事態を含むいじめ対応のフロー図
質問 | 答弁 |
---|---|
いじめが発生してからの対応フローはあるか | ない |
重大事態として扱った件数は | 過去5年だと3件 |
今回の事案を重大事態として扱わないのはなぜか | 時間がかかり、対応が遅れる |
重大事態とした方が最終的にリソース圧迫もなくなる | 組織的に対応していく |
保護者との情報共有は文書ベースで | 必ず行うべきとの考えはない |
教育長への手紙を設けて相談を受け付けては | 教育行政相談窓口で対応している |
主な質疑
正確な質疑内容は会議録をご参照ください。
なお実際は理事者側の答弁すべてが敬語表現でなされています。ここでは簡略化のため敬語表現を省いています。
①質問する理由
いじめに関して、市教育委員会による一連の対応を見ていると、すぐに改善しなければならない点が多くあると感じる。
状況に応じて対応を変える必要もあるが、共通する手法も多いため、できる限り対応策をまとめてガイドライン等で共有した方がよい。
たとえば、いじめの調査においては、まず本質的原因を多面的な切り口で分析すること。そのために、たとえば
- 子どもの特性
- 子ども同士の関係性
- 学級や学校のルールや風土・文化などの環境的問題
- 先生の特性
- 学校や教育委員会の組織に関する問題
など、具体的な切り口でそれぞれ要因を深掘りし、それぞれに対して対策を立てること。
また、被害側家族との情報共有について
- 方法
- 頻度
- 注意点
をまとめておくこと。
特に、情報共有の際は口頭ベースだと誤解が生じ易く、網羅的になりにくいなどの問題があるため、必ず文書ベースで行うこと。
また、個人情報の取り扱いも、過剰な対応にならないためにも、例示的なケースをまとめておくこと、などである。
こうした共通の手法や指針がなければ、その都度、現場の判断で対応することになる。するとリスクを避ける心理が働くため、対応の質は低くなり、全体的な改善にもつながっていかない。
いじめの本質的な解決事例を全体として積み重ねていくことは、当事者である子どもや家族の苦しみをなくしたり軽減したりすることに役立つだけではない。校長、教員、そして教育委員会にとっても、これまでずっと続いているであろう困難な状況を軽減することにもつながる。そのためにも、少なくとも上記のような見直しを行っていただきたく、質問する。
映画「夢みる小学校」に、ひとつの理想形が描かれている
余談として、先日、夢みる小学校という映画を観た。これからの学校の在り方として理想的な形がひとつ表されていると感じた。教育委員会や教育関係者には観ていただきたい。
この学校では、児童・生徒を最大限信頼し、子どもたちの自主性や自発性に任せるところが特徴的。
映画が終わってから、白梅学園大学の名誉学長である汐見先生のトークショーがあった。請願第12号の委員会審査資料の中でも、記事を紹介した方。
汐見先生のお話が興味深かった。「不登校」は以前は「登校拒否」としていた。「不登校」というと悪いことをしているような印象。「登校拒否」は、自ら選択して行かない印象。だから「登校拒否児」や「登校拒否」という表現のほうが好ましいと思っている、という趣旨の話。なるほどと思った。
いじめ発生から解決に至るまでの具体的な対応フローはあるか
小平市いじめ防止基本方針には見あたらないが、いじめ発生から解決に至るまでの、関係者との情報のやりとりも含めた、指針となる具体的な対応フローはあるか。
小平市いじめ防止基本方針において、いじめの解消に向けた取組を
- 被害 児童・生徒への対応
- 加害 児童・生徒への対応
- 関係 児童・生徒への対応
- 組織的な対応
の4つに分け、取り組むべき内容を示している。
今回、やり取りの中で、フロー(図)の必要性を強く感じた。
フローがないと、解決に当たる人たちだけではなく、当の子ども本人も、保護者も、どういうふうに解決に至っていくかの全体像がなかなか見えない。その場その場で対応されているのではという不信感につながるところがある。
フローをつくるなら、最初に来るのは「いじめの認知」かと。周りの人たちがいじめを認知するところから始まる。次のステップは、そのいじめが「重大事態か」の判断だろう。
重大事態の扱いが重要
調べたところ、この重大事態に当たるかどうかの判断が重要だと気付いた。多くのいじめは重大事態として扱うべきではないか。
📘 重大事態とは
いじめ防止対策推進法 第5章「重大事態への対処」に記載のある、次のいずれかの事態。
- いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
- いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
前者を「自殺等重大事態」、後者を「不登校重大事態」と呼ぶこともあるそうです。
上記の条件が満たされていなくとも、保護者や当事者の子どもから申請があったときには、重大事態が発生したと認める必要があります。
「いじめにより発生した」ことが条件ではあるものの、ひとつのポイントは「疑いがある」という文言。いじめの発生が疑いにすぎなくとも、重大被害が発生したと疑われるときには、この要件が満たされる。
また、特に重要なところは、児童・生徒や保護者から申立てがあったときには、疑いが生じたものと解して、重大事態に該当すると判断を下す必要があるとされているところ。
📘 重大事態の個別要件
重大事態となる個別要件は、いじめ防止対策協議会(平成27年度)(第4回)配付資料の「重大事態」の解説(案)には次のように記載されています。
自殺等重大事態の個別的要件
- 生命被害
生命に(対する)重大な被害、すなわち死および自殺未遂 - 身体被害
身体に(対する)重大な被害、具体的には、おおむね30日以上の加療を要すると見込まれる重大な傷害を目安とする - 財産被害
財産に(対する)重大な被害、具体的には、財産に対する(金銭以外の財産である場合は金銭換算で)おおむね○○万円以上の重大な損害(継続的ないじめの実行行為により財産的損害の累計がこの水準に達した場合を含む)を目安とする - 精神被害
精神に(対する)重大な被害、すなわち精神性疾患を指す。神性疾患の発症や悪化は、医師の診断に基づき判断する必要がある
不登校重大事態の個別的要件
「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている状態」における「相当の期間」の意義については、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」における不登校の定義を踏まえ、年間30日を目安とする。具体的には、いじめにより欠席を余儀なくされた疑いがある日数が年間30日(目安)に達したときに、この要件が満たされる(ただし、児童・生徒が一定期間、連続して欠席しているような場合には、上記目安にかかわらず、学校の設置者または学校の判断により、迅速に 調査に着手することが必要)。
なお、上記の資料には不登校の定義が見あたりません。統計を取る上での長期欠席者数については、こちらに定義が記載されていて、「児童・生徒指導要録」の「欠席日数」欄の日数により、年度間に連続または断続して30日以上欠席した児童・生徒 となっています。
「不登校の定義を踏まえ、年間30日を目安とする」ということは、「連続または継続して」という要件は不要なのではと思います🤔
精神被害は、いじめを苦にした結果、精神性の疾患を新たに発症し、または従前からの精神性疾患が一層悪化した場合。これは医師の診断に基づき判断する必要があるとされているが、たとえばPTSDも医師の診断が出る部分だろう。
市長報告の内容
重大事態が発生したら、公立学校は、当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会を経由して当該地方公共団体の長へまず報告する必要がある。
つまり市長に報告が上がる。その際の報告内容は次のようなもの(不登校重大事態に係る調査の指針より)。
- 学校名
- 対象の児童・生徒の氏名
- 学年、性別
- 重大被害の具体的内容
- 報告の時点における対象児童・生徒の状況
- 重大事態に該当すると判断した根拠
この報告は、重大事態が発生したと判断した後、ただちに行うものとされている。
さらに、学校もしくは学校の設置者(市教育委員会)の下に組織を設けて、そこで調査を行う。
重大事態に認定されると、情報共有をしっかりしなければならない。各教育委員に説明したり、総合教育会議でも話し合ったほうがよい、とされている。
重大事態なら組織で対応することになる
重大事態と認められた場合には、組織的に対応しなければならない。
今回やり取りしていても、(先生や)教育委員会の困難・苦難が伝わってくる。調査を担当する担任の先生や、教育委員会の職員も、普段の職務に加えて個人で対応することになれば、ストレスがかかる。最悪の場合、担当できなくなる恐れもある。
先生や職員の個々人に委ねてしまうと限界がある。そのため、重大事態と認定されたときには、組織的に対応しましょう、という仕組み。
担任の先生が熱心であればあるほど、自分の中で抱え込んだり、自分が解決しなければならない、迷惑はかけられない、そういうことを思われる。それを組織で共有していきましょうということ。これが重大事態というもので、ちゃんと組織をつくって調査を進めていかなければならない。
これまでに重大事態として扱ってきたいじめの件数は
これまでに教育委員会として重大事態として扱ってきたいじめの件数は。
5年以上さかのぼっての過去は分からないが、5年以内では2件。