(1)「重大事態」への認識を改め、子ども中心のいじめ対策へ
~ いじめ被害者のみならず、多くの関係者のためになるよう、重大事態のスムーズな運用を ~
📄会議録まとめ
令和4年6月10日に行った2件の一般質問のうちの1件目です。
3月定例会の一般質問に引き続き、学校でのいじめ対策について市に問いました。主に、いじめ防止対策推進法に定められている「重大事態」について深掘りして質問しました。
この重大事態は、教職員や保護者に周知するよう国の方針として決められています。しかし、小平市ではほぼまったく周知が行われていません。そのためほとんどの人が重大事態という扱いの存在を知りません。しかし、いじめ対策においてはとても重要な制度だと私は思います。
いじめの問題は、通常、まず担任の先生が対応します。それでも対応しきれず、いじめの被害を受けた子に自傷行為が始まったり、不登校が連続したり、もしくは被害を受けた本人や保護者からの申立てがあると、重大事態の扱いが始まります。重大事態の扱いになると、先生が個人的に抱え込んで対応するのではなく、第三者で構成される組織が対応することになります。
重大事態について、詳しくは例えば文科省のガイドラインをご参照ください。私は、この制度は、子どもたちを守ることにつながるだけではなく、保護者、先生方、 教育委員会のための仕組みでもあると考えています(もし、この認識が間違えているなら、市ではなく国の問題を追求することになりますので、そのように指摘していただきたいと思います)。
一般質問(1時間)1回だけでは、到底追求し切れないテーマです。
4月に着任した新任の教育指導担当部長が、大半の答弁を担当しました。新任の方でしたので、事前に私の方から質問予定の資料を渡し、趣旨を説明してありました。また、答弁には不慣れだろうという認識で臨みました。
しかし、とても残念なことに、事実に基づかないことや、事実と反すること、論点をずらすような答弁が多くありました。そのため、途中から答弁がまったく信用できなくなりました。議員として3年間質問してきましたが、このような事態は初めてです。事実確認のために、同じことを何度も視点を変えて聞かざるを得なくなったため、余計な時間を費やしました。大変残念です。
私は、ご相談いただいた被害家族のことを念頭に置きながら、市立学校の教育環境を改善し、職員の方々が働く環境の改善にもつながると思って質問しています。無駄なやり取りが発生しないように準備し、真剣に質問しています。このような態度をされては、時間が浪費されるばかりで、何の改善にもつながりません。教育委員会の一部職員はここを読んでいるようですので、そのような態度の方は、猛省してください。
大人が真面目に対応しない限り、そのしわ寄せはすべて、弱い立場の子どもに行きます。
市のこれまでの対応を見ていても、議会での答弁を聞いても、教育委員会の定例会を傍聴していても 、重大事態の理解が進んでいるとは思えません。事態を重く受け止め、関係各所には真剣になっていただき、もっと勉強していただき、改善していただきたいです。
次回以降もこの問題を追求し、別のアプローチで周知もしていきます。
- pointer:令和4年9月定例会で、引き続き追求しました
また、重大事態も含めたいじめ対応について、インターネットを検索しても、よいフロー図が見つからなかったので、つくりました。
- book:重大事態を含むいじめ対応のフロー図
重大事態について
質問 | 答弁 |
---|---|
重大事態の扱いを否定的に捉えているか | 肯定否定ではなく要件に当てはめ対応 |
「3要件以外の条件でも判断する」とした答弁は間違いか | 法に沿って判断 |
対応に時間かかるなら従来法と並行では | いじめはすべて迅速対応してる❌ |
学校方針に3要件についての記載がある学校は | すべての学校で記載あるはず❌ |
保護者会で重大事態のことを説明しているか | している↓ |
保護者会で3要件や重大事態とは何か説明しているか | 内容を把握していない |
教職員の研修会で3要件や重大事態とは何か説明しているか | きちんとしている |
入学や各年度開始時に行うとされている説明をしているか | 守り進めている |
なぜ重大事態ということを知らない保護者の方がいるのか | 答弁できない |
これまでの重大事態の累計件数は | 3件 |
調査開始から最終報告までの期間は | 個別事案特定につながるので答弁控える |
なぜ対応期間を知ることが個別事案特定につながるか | おそれがあると |
調査報告書は公 開するか | 内容、被害側意向、公表の影響を勘案し判断 |
調査報告書は情報開示請求で出るか | 開示請求可能は本人に関わることのみ❌ |
調査報告書を公表することが望ましいと考えているか | そう考えている |
専門家等から重大事態として扱う助言受けても扱わなかった件数は | 0件❌ |
検証結果と提言は誰の責任でどう教育行政に反映か | 市教委が学校に指導助言 |
いじめ対策・全般的に
質問 | 答弁 |
---|---|
専門家等から助言を得る会議の会議録をつくっていないのは | つくっている |
会議録等と答弁したが「等」とは何か | 資料などが含まれる❌ |
いじめ対策の委員会名簿を積極公開してないのは | 公平中立に慎重な議論のため |
いじめ事案への対応フロー図をつくり周知活用しては | 今後研究していく |
リソースの問題で組織的対応図るとした内容は | 外部委託できる業務は検討する |
❌をつけたものは、事実に反する虚偽の答弁です。それ以外も、事実に基づかずに答弁した疑いがあります。追求します。
通告書
主な質疑
正確な質疑内容は会議録をご参照ください。
なお実際は理事者側の答弁すべてが敬語表現でなされています。ここでは簡略化のため敬語表現を省いています。
①質問する理由
前回に引き続いての質問
本年3月定例会で行った一般質問に引き続き、学校でのいじめ対策について市に問う。
前回解説した重大事態という扱いは、調べた限り、いじめの当事者である子どもたちのためだけではなく、保護者の方々、担任の先生方、教育委員会職員のためになる制度。
重大事態への対処についてどう捉えているか
市は、いじめ防止対策推進法にある重大事態への対処が「必ずしも子どものためにならない」と捉えているようだ。重大事態への対処をどう捉えているか。
いじめを受けた児童・生徒とその家族にできる限り配慮し、重大事態の原因等の究明および解決に向けて取り組むものと捉えている。
質問に対する答えになっていない。「必ずしも子どものためにならないと捉えているように感じるが」の前置きが無視されている。
重大事態という仕組みを肯定的に捉えているのか、否定的に捉えているのか
要は、市は重大事態という仕組みを肯定的に捉えているのか、それとも否定的に捉えているのか。
肯定的に捉えていて、例えば「現在は運 用の面で慣れていないため時間がかかってしまう課題はあるが、今後、運用をスムーズにできるようにしていきたい」など捉えているのか。
または否定的に捉えていて「リソース不足の問題があるので、できれば重大事態の扱いはしないほうがよいこともある」などと捉えているのか。そのあたりの見解をもらいたい。
重大事態が子どものためにならないという考えではけっしてない。また、肯定や否定ということではなく、その要件に当てはまるものは、きちんと当てはめて対応していくことが大切。
これまでの答弁では「重大事態の扱いをすると時間がかかり、本来のいじめ対策が進まない」というようなことを言っていたので、否定的に捉えていると感じる。
重大事態として扱うべきものを扱わなかったら法律違反、判例あり
もし、市が制度を否定的に捉えているがために、本来は重大事態として扱わなければいけない事態を重大事態として扱っていなかった場合は、法律違反になる。訴訟になった場合は敗訴する。
判例がある。さいたま地方裁判所で令和3年12月15日に判決が言い渡された、平成30年(ワ)第1465号の損害賠償請求事件。重大事態として扱うべきものを扱わなかったことで被害児童の保護者が訴訟を起こし、埼玉県川口市が敗訴し損害賠償の支払いが命じられた。
判決文を読むと、小平市で私が相談を受けていることと同様の状況であることが分かる。
🏛️ さいたま地方裁判所・平成30年(ワ)第1465号の損害賠償請求事件
この訴訟は 、3月定例会でも取り上げた、Protect Children(プロテクトチルドレン)の代表である森田氏が起こした訴訟です。教諭と教育委員会が、いじめ防止義務や不登校解消義務など職務上の義務に違反したということで起こされたものです。
令和3年12月15日に判決が言い渡され、550万円の請求に対し、55万円と遅延損害金を支払うことが命じられました。
判決文から一部を抜粋すると次のとおりです。重大事態の認知について、小平市で発生した今回のケースとほぼ同じ状況です。
(原告の主張)
原告母は、平成28年10月12日、市教委に対し、原告について重大事態が発生したとの申立てをし、同月24日には原告の年間欠席日数が不登校1と合わせ30日に達した。しかし、市教委は、平成29年1月10日まで本件を重大事態と認識せず、重大事態の調査を行わなかった。
(被告の主張)
市教委は、本件中学校から原告母及び原告に関する事情や本件の経緯を聴取し、原告の不登校の原因はいじめではないと判断したものである。本件中学校の教諭らの判断と同様、その判断に裁量の逸脱・濫用はない。
争点2(市教委の行為の違法性の有無)について
(1) 原告は、市教委が原告について重大事態の調査を行わなかったことを職務上の義務に違反し違法であると主張する。 「川口 市いじめの防止等の基本的な方針」は、重大事態の発生が認められるときは、市教委において、当該学校が重大事態の発生を認めないときでも、重大事態が発生したものとして、報告・調査等に当たるものと定めている(甲2・12頁)。そして、市教委は、遅くとも同年10月24日までに、原告母からの連絡や本件中学校の教諭らの報告等により、本件中学校の教諭らの認識する事実を概ね知らされていた(認定事実⑵ト)。したがって、市教委は、重大事態の発生を認知すべきであったにもかかわらず、重大事態としての調査を怠り、また、同調査の必要について本件中学校の教諭らに対する指導を行わなかった(同ト)のであるから、職務上の義務に違反したものと認められる。これに対し、被告は、市教委が、本件中学校の教諭らから聴取した事情に基づき原告の不登校の原因はいじめではないと判断したのであり、その判断に裁量の逸脱・濫用はないと主張するが、その判断が合理的根拠を欠くことは争点2の説示と同様である。重大事態の発生を認知すべきときに認知しない裁量があるとは解されず、被告の主張は採用できない。
先生が教育委員会を訴える可能性も
この事例は保護者からの訴えだが、場合によっては先生から訴えられる可能性もある。
つまり、重大事態として扱えば組織で対応することになるのに、扱わないことで先生個人に負担が集中してしまう。それで先生に例えば心身の不調が出てしまった場合(は訴えるべき事例だと思う)。
法的な枠組みの中で、いかに子ども中心にできるか
もちろん、いじめ対策は「訴訟がどうの」を気にしてやるべきではなく、子どものことを中心に考えなくてはならない。しかし、そういう法的な縛りがあることはしっかり押さえておく必要がある。
市独自の判断によって重大事態にならないのはどういうケースか
本年3月定例会の答弁で、報告書作成や情報交換等に膨大な時間がかかり、いじめへの対応が 遅れることもあるため、重大事態はケースによって判断するとあった。
しかし、いじめ防止対策推進法にはそのような判断を下す余地の記述はない。判断によって重大事態にならないのはどういうケースか。
いじめ防止対策推進法では、重大事態は:
- いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき、および
- いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき
とされている。
また、文部科学省が定めたいじめの重大事態の調査に関するガイドラインによると、
- 被害児童・生徒や保護者からいじめにより重大な被害が生じたという申立てがあったときには、重大事態が発生したものとして調査すること
とされている。
これらに該当しない場合は、重大事態と判断しない場合がある。
前 回こちらから詳しく説明していることを繰り返しているだけの意味のない答弁です。事前の打ち合わせでも、時間をかけて質問の趣旨を伝えています。こうした時間の無駄はすべて子どもたちにしわ寄せがいくと、心に刻んでほしいものです。
3月定例会での答弁は間違えていたということでよいか
答弁の担当者が入れ替わっている(国冨氏→岡崎氏)ので、思いが変わっているのか。3月定例会での「今回の事例はなぜ重大事態ではないと判断したのか」という問いに対し、当時の教育指導担当部長は次のように答弁した。
議員が述べた3件の重大事態の要件がまずひとつの判断。
また、我々が対応している中で実際に感じている問題点として、いじめの対応は、重大事態であるか否かによって変わるべきものではない。重大事態等をいじめ防止対策推進法において行っていくことで生じる課題もある。
議員の指摘と同様だが、現場においては、子どもたちに実際に対応する時間等が必要。しかし、その時間が、報告書の作成や、さまざまな情報交換等で奪われてしまうということも、事 実としてある。膨大な時間がかかる。その中で、いじめへの対応が実際は遅れてしまうこともあるので、これはケースによって判断すべきものと考えている。
なお、ここでいう3要件は、先ほど答弁にもあった次の3つ。
- 不登校重大事態
- 自殺等重大事態
- 本人や保護者からの申請があった場合
つまり、3月定例会では「3要件とは関係ないところで、ケースによって判断する」という答弁。これが間違っていたということか。
過去の答弁で、重大事態として扱うか否かはケースによって判断すると述べたのは、個別の案件において、何を優先して対応するか案件ごとに判断をする必要があるということ。
一義的には、(いじめ防止対策推進)法第28条の重大事態の定義に沿って判断すべきであると認識している。
答弁を間違えたということか。3件の重大事態の要件がひとつでも満たされれば、重大事態として扱わなければいけない。
教育委員会の勝手な判断で重大事態として扱うか否かを決めてよいのか
逆に、その要件を満たさなかったら重大事態にはならないはず。教育委員会の判断で、勝手に重大事態にすることがあるのか。
教育委員会の判断でということではなく、法第28条の重大事態の定義に沿って判断すべきであると認識している。
つまりは答弁を間違えたということ。
時間がかかるなら、これまでの対応と並行して重大事態の対応をすればよいのでは
もし、時間がかかるという課題があることで、重大事態として扱わないことがあれば問題。
そういう考えでいるなら、時間がかからない対応をしながら、並行して重大事態の扱いをすることは可能だと思うが、どうか。
重大事態の調査を開始するに当たって、一定の時間を要するところはある。
要は、これまで重大事態として扱わなかった場合にやっているようなやり方をしつつ、重大事態としても扱う、というやり方ができるのではないか。
重大事態の有無にかかわらず、すべてのいじめの問題については、迅速に対応をしている。
日本語が伝わらないことがもどかしく、質問しているときはこの答弁の意味に気付きませんでしたが、私が相談を受けているいじめの問題は、まったく迅速に対応していません。数ヵ月放置などの状況です。それを迅速だと強弁したことになります。次回追求します。
並行して扱うことが可能なら、やはり3月の定例会の答弁は間違いだったということ。
重大事態という扱いがあることについて、周知はどう行っているか
重大事態という扱いがあることやその内容について、当事者、保護者、校長も含めた教職員への周知はどう行っているか。
保護者等に対しては、重大事態の対応についても記載している「学校いじめ防止基本方針」を学校ホームページ等で公開している。
また、各学校においては本基本方針を保護者会等において説明している。教職員に対しては、研修会等の機会を捉え、重大事態の扱いを含めた学校いじめ防止基本方針について共通理解を図っている。
重大事態についての記載がほぼ皆無な資料を持ち出して、周知を図っているとは何か
周知を図っているということだが、重大事態に関する説明は、市のいじめ防止基本方針を見てもA4の1ページだけしか書かれていない。内容がほとんど書かれてない。これだけを見ても、何が書いてあるか分からない。
学校いじめ防止基本方針にも、重大事態についてはほぼ何も書かれてない。ホームページでいろいろ見たが、数行の言葉しか書かれていない。重大事態というものが何なのか、先ほどの3要件も書かれてない。
現状の学校いじめ防止基本方針では、重大事態の周知はできない
つまり、学校いじめ防止基本方針を出しても、重大事態の周知はできない。
特に、小平市いじめ防止基本方針には、「本人や保護者からの申立てがあったら重大事態として扱わなければならない」という重要なことが書かれていない。
その判断の基準(重大事態の基準)を以下のように示しているが、児童・生徒や保護者からの申立て等に基づき、適切かつ真摯に対応する
と書いてあるだけ。
これを読んで分かる人がいるとは思えない。重大事態のことを知っている人でないと「本人や保護者からの申立てがあったら重大事態として扱わなければならない」ということは分からない。
いろいろ読むと、どうしても「重大事態の扱いを意図的に隠したいのでは」と感じる。
欠席日数に関する記述にも誤りがある
小平市いじめ防止基本方針に書かれている重大事態のことについて、もうひとつ問題点を挙げるなら、7の重大事態への対処。(1)の一番下に、
年間30日を目安とする連続した欠席がある場合
とあるが、連続して30日というのは何を根拠に書いているのか。
議員が今述べた、重大事態の内容が各校の基本方針にもほとんど触れられていないということについてだが、分量の差はあるかもしれないが、きちんと触れているし、学校によっては対応のフロー図もつけて保護者に示しているところもある。
後述するように、学校の基本方針は、いじめの重大事態については、まったくといってよいほど説明がありません。
フロー図をつけているのもたったの2校(八小と鈴木小)で、しかも重大事態について意味がまったく分からない図です。
すぐにウソだと分かるようなことを、なぜこのように強弁するのか意味がわかりません。聞いている人や、会議録を読んだ人に、間違えた認識を与えることになってしまう不当な行為です。
🔶 学校の基本方針にフロー図を掲載しているのは2校のみ
現時点(令和4年6月10日)で、学校の基本方針にフロー図を記 載している小平市立校は、次に示したとおり、八小と鈴木小の2校のみです(図はクリックで拡大します)。
なお、6小と4中の年間指導計画には、別のフロー図が掲載されています(後述します)。
これらのフロー図には、重大事態をいつの時点で、どう判断するかという重要な情報が書かれていません。鈴木小は3要件の記載があるのでよいのですが、それ以外の学校については、そもそも重大事態についての詳しい記載がないため、フロー図があっても役に立ちません。
小平市立第八小学校の学校いじめ防止基本方針(令和4年6月1日版)に記載のフロー図