(2)東京サレジオ学園北側の大規模開発について
~まちづくりには事業主と周辺住民との充分な話し合いが不可欠です~
📄会議録を見るまとめ
令和4年9月9日に行った5件の一般質問のうちの2件目です。
東京サレジオ学園北側の土地約9,200㎡がトヨタホーム(株)に売却され、土地利用構想が示されました。最低限の敷地面積で宅地が並び、市や都の整備基準では原則設けないこととされている行き止まり道路が全長約250mも続く案です。
周辺住民は、市の開発ガイドブックに明示されているとおりに、事業者との自主的な話し合いの機会を求めてきました。しかし、事業者から断られ続けてきました。条例にある事業主の責務「市民とともにまちづくりを行う」が守られていない状況です。
その後、事業者からは改案が示されたものの、事業者がこれまで周辺住民との話し合いに応じなかったことが原因で軋轢が生じています(その後についてはこちら)。
住民は過剰な要求をしてきたわけではありません。まちづくりには話し合いが不可欠です。その観点から、市に問いました。
続けて令和4年12月の一般質問でも開発条例や運用の不備について提案の形で一般質問しました。
質問 | 答弁 |
---|---|
事業者はどうすれば市民とまちづくりしたことに | 自主的協議や建築協定など |
市長が袋路状道路を認めるのはどういう場合か | 都の審査基準に合う場合 |
最後の転回広場から行き止まりまでの間隔が基準違反では | これから |
32.5m以内のルール違反でも許可された事例があるということか | その通り |
都の審査基準を守らなくても許可が下りることがあるのか | 都度判断で |
袋路状道路として市内最長を更新する前例をつくってよいのか | 255mがあった |
「紛争の予防に努める」とは | 条例に基づいた対応、周辺住民への真摯な対応 |
市は事業者にどんな関与をしているか | 自主的に話し合いを重ねるよう指導 |
過去に調整会は何回あったか | 大規模で1回、中規模で1回 |
通告書
主な質疑
正確な質疑内容は会議録をご参照ください。
なお実際は理事者側の答弁すべてが敬語表現でなされています。ここでは簡略化のため敬語表現を省いています。
①質問する理由
用語について
ここでは、以下3つを同じ意味で用いています。
- 行き止まり道路
- 袋路状道路(ふくろじじょうどうろ)
- 袋小路(ふくろこうじ)
概要
本年、上水南町4丁目の東京サレジオ学園北側の土地約9,200㎡が、トヨタホーム(株)に売却されることとなった。
黄色で囲んだあたりが売却地です。
小平市開発事業における手続及び基準等に関する条例(以下、条例と呼ぶ)に従い、土地利用構想届出がなされた。
その後、本年6月25日に、事業計画の概要に関する説明会が開催され、7月に、周辺住民からさまざまな意見書が提出された。
条例に定める手続き上、今は、事業者からの見解書提出を待っている段階である。
📅 質問時点での進捗状況
一般質問を行った令和4年9月9日時点での大規模開発手続きの進捗状況は、次の開発の手続きフロー図で「次ココ」と書いてある手前です(クリック/タップで拡大します)。
なお、フロー図を見ると調整会の後に開催されるように見える土地利用審議会は、今回、調整会より前に行われました。 住民からの意見書を受領した後の8月9日に開催されています。
実は、土地利用審議会の開催時期について、条例(下記)に記載がありません。ほかの案件と一緒に審議するなど、開催時期は前後するようです。
(土地利用構想に係る指導又は助言)
市長は、第8条第2項の規定による土地利用構想の届出があった場合において、安全で快適なまちづくりを推進するために必要があると認めるときは、大規模開発事業主に対し、都市計画マスタープランの方針に適合させるために必要な指導又は助言を行うことができる。
2 市長は、前項の指導又は助言を行うに当たっては、第42条第1項に規定する小平市土地利用審議会の意見を聴くことができる。
今回のやり取りで、フロー図の表記が誤解を招くことが判明したため、修正を検討しているようです。
条例第5条に、事業主の責務が次のとおり記載されている。
事業主は、安全で快適なまちづくりを推進するため、開発事業を行うに当たっては、その内容を都市計画マスタープランの方針に適合させ、自らも地域社会の一員としての社会的使命を自覚し、市民とともにまちづくりを行うものとする
まさに、市民とともにまちづくりを行ってほしいという願いをもつ周辺住民が、小平市民等提案型まちづくり条例を活用し、地区まちづくり協議会設立に向け準備会を登録するなどの活動と並行して、事業者に話し合いの機会を求めている。しかし、実現していない状況がある。そこで、市に質問する。
(新着情報)9月1日、事業者から、隣接住民と話し合いを行うと連絡があった
なお、この9月1日付で、事業者より、隣接されている住民の方々と話し合いするという連絡があったことをここでお知らせしておく。
ここにきて、事業者からやっと、住民の求めに応じて話し合いをするというお知らせをいただきました。しかし、隣接している住民のみが対象の予定です。
その後の顛末を見ると痛感しますが、本来、事業者のためにも、もっと早い時期から、隣接住民だけではなく周辺住民も含めた話し合いを行う必要があると思います。
でなければ、市民とともにまちづくりはできません。
東京サレジオ学園のすばらしい環境
中を見せていただいたが、東京サレジオ学園は、非常にすばらしい環境。
サレジオ会創立者のドン・ボスコ(ジョヴァンニ・メルキオッレ・ボスコ)氏は、青少年の教育には優れた教育者と豊かな教育環境が必要であり、「人間は幼い日の心象に焼き付けられたイメージを生涯持ち続ける」とされた。
親と別れて家を離れた子どもたちの心に、できるだけ美しい原風景を残したいという思いを持たれていたそうだが、まさにそういったことが実現されている場所と感じた。
東京サレジオ学園が北側の土地を売却することになった理由
ただ、外観からは分かりにくいが、建物が老朽化して年間の維持費がかかっている。
また、国の方針で、児童養護施設は、より小規模で、家庭的な環境にしようとなってきた。
東京サレジオ学園は、今100人弱のお子さんがいて小規模ではないので、国の方針に基づいて政策誘導的な措置が行われ、措置費や総助金等の見直しが行われている。
たとえば20人から30人の児童養護施設で国から100もらえるとすると、東京サレジオの施設では66くらいしかもらえない。
また、自立支援専門のソーシャルワーカーや心理職といった専門職の数も、小規模施設と東京サレジオ学園規模の施設とで同じ人数しか付けてもらえない、そういった理由で経営が厳しくなってくるところがある。
🔍 児童養護施設に関する国の方針
調べ切れていませんが、国の方針については、次の資料がまとまっていると思います。
里親や小規模施設の、家庭的な環境で子どもに育ってもらおうという趣旨のようです。しかし、一方で、里親を転々とすることになる子どもがいたり、結局コスト削減なのではないかという声もあります。別途調査が必要と思います。
小規模化と施設機能の地域分散化による家庭的養護の推進
- 児童養護施設の7割が大舎制で、定員100人を超えるような大規模施設もあることから、家庭的養護の強力な推進が必要である。
- 今後は、施設の小規模化と施設機能の地域分散化を進め、
- 「本体施設のケア単位の小規模化」を進め、本体施設は、全施設を小規模グループケア化(オールユニット化)をしていく。
- 「本体施設の小規模化」を進め、当面、本体施設は、全施設を定員45人以下にしていく。(45人以下は現在の小規模施設加算の基準)
- 「施設によるファミリーホームの開設や支援、里親の支援」を推進し、施設機能を地域に分散させ、施設を地域の社会的養護の拠点にしていく。
- 将来の児童養護施設の姿は、一施設につき、小規模グループケア6か所までと小規模児童養護施設1か所を持ち、小規模グループケアは本体施設のユニットケア型のほか、できるだけグループホーム型を推進する。また、1施設につき概ね2か所以上のファミリーホームを開設又は支援するとともに、里親支援を行う。
本体施設の高機能化
- 児童養護施設については、本体施設を大胆に小規模化し、施設機能を地域分散化していくとともに、本体施設は高機能化する、という将来の方向性を明確にする。
社会的養護の整備量の将来像
- 日本の社会的養護は、現在、9割が乳児院や児童養護施設で、1割が里親やファミリーホームであるが、これを、今後、十数年をかけて、
- 概ね3分の1が、里親及びファミリーホーム
- 概ね3分の1が、グループホーム
- 概ね3分の1が、本体施設(児童養護施設は全て小規模ケア)
という姿に変えていく。
児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護 の推進のために(概要)・社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまとめ 平成24年11月
平成27年度を始期として平成41年度までの15年間で、施設の本体施設、グループホーム、里親等の割合を3分の1ずつにしてい く目標を達成していくことを目指し、都道府県は施設に要請して「家庭的養護推進計画」を策定させるとともに、都道府県は、平成41年度末の社会的養護を必要とする児童の見込み数や里親等委託率の引き上げのペースを考慮して確保すべき事業量を設定したうえで、施設と調整を行った上で「都道府県推進計画」を」策定する。
児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知(平成24年11月30日)について概要を示している大阪府の資料から抜粋
そういったことと、施設の老朽化等も影響し、北側の土地を売ることになったという状況。
事業者の構想に対し、隣接住民から指摘されている問題
その後、土地が実際に売却されることになり、事業者であるトヨタホームから事業構想が出てきた。
隙間なくみっちり建てる構想で、行き止まり道路が全長約243mある。これは市 内でも最長級。
1戸あたりの敷地面積約120㎡が57戸分。小平市の整備基準では平均120㎡以上とされているので、実質的に最小の敷地面積。
法第33条第4項の規定による事業区域内において予定される建築物の敷地面積の最低限度は、次に掲げる事業面積の区分に応じて当該各号に定めるとおりとする。
(1) 事業面積が3,000㎡以上の場合は、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。
ア 120㎡ある敷地の数が全敷地数の70%あること。
イ 一の敷地の最低面積が110㎡あること。
ウ 全敷地の平均面積が120㎡あること。
令和4年6月25日の説明会で示された基本構想をもとに作成したイメージ図です。
その後、9月下旬に事業者から新たな構想が提出されています。