--- first: 2026-09-11 description: 令和8年度9月定例会における一般質問2件目のまとめ。時間外勤務手当の10分未満切り捨てによる未払い賃金の計算を従業員に丸投げする社会福祉法人への市の指導と、賃金規定を全部非公開とした理由を追及。 title: "(2)従業員に未払い賃金の計算をさせる社会福祉法人を許す小平市" tags: - 一般質問 - 社会福祉法人 - 情報公開 --- import MessageBubble from '@/components/MessageBubble.astro'; import KaigirokuDougaLink from '@/components/KaigirokuDougaLink.astro'; import QuestionSummary from '@/components/QuestionSummary.astro'; ## まとめ 令和8年9月11日に行った4件の一般質問のうちの2件目です。 本年8月の厚生委員会で採択すべきものと決した請願第19号は、社会福祉法人(以下、法人)の介護報酬の不適切な受給と、過去3年以上の時間外労働の未払い賃金を問題としました。市は同委員会で、未払い賃金の精算に関し、立川労働基準監督署に確認したところ「どこまでが残業なのかは本人しか分からないため、本人が手計算して請求させる運用であっても労働基準法違反には該当しない」との説明を受けた旨を説明しています。 法人は、就業規則と給与計算システムで時間外勤務手当の10分未満を切り捨ててきました。賃金全額払いの原則に反する恒常的な未払いであり、本年4月以降は1分単位に改められたものの、過去3年分は未払いのままです。さらに、過去3年分を支払うとしながら自ら計算せず、従業員にタイムカードのログを渡して「各自で手計算して請求するように」と指示しています。計算の丸投げは法定義務の転嫁であり、支払いを従業員の申請待ちにする運用は、従業員に泣き寝入りを強いるものです。 答弁では、労務管理の是非は労働基準監督署の見解によるものとして、市は判断しないとの姿勢が示されました。契約上、事業者に就業規則の提出を求めておらず、一般監査でも各事業所の賃金台帳を確認する項目はないとのことでした。賃金規定は情報公開請求に対し全部非公開とされ、その理由についても具体的な説明はありませんでした。市が委託する公共性の高い事業の労務管理について、市自身が確認する手段を持たない状態が明らかになりました。 ## 通告書 ## 主な質疑 import Partial from './../../_partial.mdx';
### 質問する理由 本年8月の厚生委員会で採択すべきものと決した請願第19号は、社会福祉法人(以下、法人)の介護報酬の不適切な受給と、過去3年以上の時間外労働の未払い賃金を問題とした。市は同委員会で、未払い賃金の精算に関し、「立川労働基準監督署に確認したところ『どこまでが残業なのかは本人しか分からないため、本人が手計算して請求させる運用であっても労働基準法(以下、法)違反には該当しない』と説明を受けた」旨の説明をした。 法人は、就業規則と給与計算システムで時間外勤務手当の10分未満を切り捨ててきた。これは法第24条の賃金全額払いの原則に反する恒常的な未払いで、本年4月以降は1分単位に改めたが、過去3年分は未払いのままだ。 さらに、法人は過去3年分の未払い賃金を支払うとしながら、自ら計算せず、従業員にタイムカードのログを渡し「各自で手計算して請求するように」と指示した。計算の丸投げは法定義務の転嫁であり、支払いを従業員の申請待ちにする運用は、従業員に泣き寝入りを強いるものである。 市がこれを容認すれば、他事業者への劣悪な労務管理の助長になるため、以下質問する。 --- ### ① 計算を従業員に丸投げする運用を適正な労務管理として是認するのか 法第108条・施行規則第54条は、賃金台帳に労働者ごとの実際の労働時間数・延長時間数を記入することを使用者に義務づけ、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインも、労働時間の把握・管理を使用者の責務としている。法人は10分単位の集計を行い、10分未満を含むタイムカードも保持している以上、1分単位での再計算も法人が行える。 計算を従業員に丸投げする運用は法定義務の転嫁であり、支払いを従業員の申請待ちにする運用は、賃金を毎月1回以上・一定の期日を定めて支払うことを定めた法第24条第2項の趣旨に反し、賃金支払いを従業員の請求に条件付けるものである。市はこのような運用を適正な労務管理として是認するのか。 労働基準法に関する運用については、専門的な知見を持つ労働基準監督署の見解によるものと認識しているので、市として、本事案の適正な労務管理の是非を判断するものではない。 #### 市は就業規則の不備を認めるのか 請願の審査のとき、厚生委員会で理事者側の説明として「共通の就業規則に不備が認められる場合、所管機関への相談等を行うよう指導する必要があると認識している」と述べられた。そうすると、就業規則に不備があれば指導できるということになる。10分未満の切り捨てを定めた就業規則は、全事業所に共通する規則だったのか。共通するのであれば、市はこれを不備と認めるのか確認する。 労務管理の関係の内容については、労働基準監督署が運用の仕方を判断する。市としてそこで判断するということはないが、相談や通報をいただいた場合は、その事実については確認することはある。もしやっていないというような状況があれば、労働基準監督署等と相談して、是正するよう促しをすることになろうと考えている。 請願のときの委員会で、理事者側として「共通の就業規則に不備が認められる場合、所管機関への相談等を行うよう指導する必要があると認識している」と述べられた。就業規則に不備があったら指導できると言っている。実際の実労働時間数を記入しなければならないのに、それがされていなかった。賃金を毎月1回以上一定の期日を定めて支払うことを定めた法第24条第2項の趣旨にも反する。10分未満を切り捨てることは就業規則の不備と言えると思うが、不備ではないのか。 厚生委員会での発言の場所はすぐには出てこないが、社会福祉法には、社会福祉法人に対する指導監査の過程において、所轄庁が処分権限を有さない労働関係法令も含め、これに関する違反の疑いがあるものを発見した場合は、法人等に対して管轄機関への確認を促す等の指導を行うという記載がある。就業規則にも入っている可能性があると考えており、市としては、そういうものを発見した場合は、法人に対して、今回で言えば労働基準監督署へ確認した方がよいと促す等の指導を行うことができる。 では、10分未満の切り捨てを定めた就業規則は、市は不備と認めるのか。はっきりと聞く。 それが不備かどうかというのは、市の判断でするものではない。 不備と認められれば、市は所管機関への相談等を行うよう指導するのか確認する。 不備が認められるか認められないかに限らず、違反の疑いがあるものを発見した場合は、法人に対して管轄機関への確認を促す等の指導を行うことになっている。不備だということが確認できなくても、就業規則にあまりよくない内容があることが想定される場合は、労働基準監督署に確認をするよう言うことができる。 #### 計算が困難な従業員への助言は 3年間、月に20日勤務であれば720日分の計算をしなければならない。毎日の端数処理をタイムカードから計算するのは普通の人には難しい。計算が困難な従業員には、法人がサポートするよう最低限の助言をされているのか。 その辺の運用の仕方については、労働基準監督署と法人でどういうやり方がよいのかを話し合っていただいて、実際に決めて各従業員に促すということになる。その中で従業員がこのやり方は難しいとなれば、法人が労働基準監督署に相談して、また是正を図っていくことになると理解している。 #### 直営であればどう対応するのか もしこの事業が直営だったらどうか。市が直営する事業で未払いが判明し、10分未満を切り捨てていたという事態が判明したら、労働基準監督署にいちいち確認して、従業員が計算するのがよいのか法人が計算するのがよいのかを確認してから支払いを求めるのか。それとも、間違いがあったのだから市がきちんと支払うべき賃金を計算して支払うのか、どちらの対応をするのか。 直営という話は分かりかねるが、いずれにしても労働関係の相談は、従業員なり職員なりに賃金を支払っている企業なり法人なりと、労働基準監督署が話をしてどうするかというのが基本的なものになる。 #### 時効の進行と申請者の不利益を防ぐよう求められないか 未払い賃金の請求権は2年で消滅する。法人が従業員からの申請待ちという運用を続ければ、計算も複雑でできる人も少ないため、申請しないまま時効が進行し、本来支払われるべき賃金が時効で消滅する従業員が必ず出る。申請した従業員が人事上の不利益を恐れて申請を控えるおそれもある。公共性の非常に高い事業を行う法人への指導を、市として労働基準監督署に丸投げしているように聞こえる。 1つとして自ら実労働時間を確定して支払うこと、2つとして時効にかかる前に支払いを完了すること、3つとして申請した従業員や内部通報者に不利益を及ぼさないこと。これらを市として求めたとしても、何ら法律に違反することではないと思うがどうか。 いずれにしても、労働基準法に書かれていることをやるのが大原則になる。市として労基署に任せたので特にやることはないということではなく、情報や通報をいただいた内容が賃金にかかわることであっても、法律に従って労働基準監督署に通報したり、法人に対して教示して労基署に相談するよう促したりすることはある。市としても必要に応じて調査を行うことは必要だと考えている。 法人に対する対応としては、労基署に確認し、正しいやり方をしっかり話し合って確認するよう指導することは可能と考えている。どういう方法でいつまでにやるかといったことは、市には知識も経験も少ないので、知識や経験が豊富な労働基準監督署と調整するよう指導するという話になる。 --- ### ② 10分未満の切り捨ての把握と支払い完了の確認は 10分未満の切り捨ては、法第24条の賃金全額払いの原則に反する恒常的な未払いである。10分単位の集計が可能な以上、「10分未満は従業員が申告する」という運用は成立しない。市はいつ把握し、どう指導したのか。過去3年分の支払いの完了を確認しているか。 未払いを従業員が申告する運用については、通報者からの情報提供により、5月に把握した。指導や支払いの完了の確認については、現在、調査中のため、答弁を差し控えさせていただく。 #### 労働時間どおりの賃金支払いを求める行政指導はできるのか 東京労働局に直接確認したところ、労働局としては「労働時間どおりに賃金を支払えとは言えるが、タイムカードどおりに支払えとは言えない」と回答したそうである。つまり労基署としても、実労働時間に応じた賃金支払いを求める行政指導はできるということになる。そうであれば、労働時間どおりにきちんと支払ってくださいと言うことはできるのではないか。 労働時間どおりに支払ってくださいと言うことはできる。ただ、ではどういうふうに払うのかという話になるので、労働時間どおりに払っていない疑いがあるのであれば、その払い方も含めて労働基準監督署に相談し、どうやって支払ったらよいかをしっかり相談した上で対応するよう伝えることはできると考えている。 市としてもっと強く出るべきである。労働基準監督署に相談してそのとおりにしてくださいというのは及び腰に映る。不備があると認めたのであれば、労働時間どおりの賃金を支払うよう、きちんと法人に求めるべきである。 --- ### ③ 地域包括支援センターの事業者に賃金全額払い違反の規定がないか確認したのか 市は、地域包括支援センター運営業務を委託している事業者に対しては、それぞれ就業規則を提出させているが、時間外勤務手当の支給に関する規定について、法第24条の賃金全額払いの原則に反する規定の有無を確認したのか、確認した結果を含めて問う。また、違反する規定を把握した場合、対象の事業者に対して、いつ、どのような是正指導を行ったのか、是正指導の結果を含めて問う。 地域包括支援センターの委託業務契約においては、受注者に就業規則の提出を求めておりません。 #### 注意喚起と就業規則の未提出はちぐはぐではないか 注意喚起はするけれども就業規則の提出は求めていないというのはちぐはぐではないか。注意喚起したことが達成できているかを確認する手段を市は持っていないということになるが、そういう状況でよいのか。 これは随意契約の一般的な話である。契約行為を起こす際には契約書などの必要書類を添付してもらい契約に至るが、今回の委託に限らず、市で委託契約を締結する際に相手方の就業規則を添付してもらうことはない。ただ今回は通報や相談をいただいているので、残りの包括も含めて注意喚起をしていく方がよいと判断し、注意喚起を行った。 注意喚起はもうされたのか。 5月に行っている。 #### 注意喚起に端数処理の点検は含まれたのか その注意喚起の文書の中に、10分未満の端数処理を点検するよう書かれたか。 今回の注意喚起については、細かい内容をこうしてくれということではなく、関係法令等の遵守、個人情報の適正な管理と守秘義務、公平中立性の確保、適切な労務管理と人員体制の維持、不適切な事案発生時の迅速な報告などを項目として、これらに注意しながら運営するよう通知する内容である。 #### 公契約条例の観点からどう考えるのか 端数処理についてまた問題が再発する気がしてならない。市長は公契約条例を公約に掲げていた。自治体が発注する業務委託などの契約で働く人の適正な労働条件を守ることを定めた条例である。端数処理がされていなかった問題が発覚したのに、注意喚起の中で具体的に指摘せずに進めるのは、契約で働く人の適正な労働条件を守る方向に働きにくく、ぼんやりとした抽象論で終わってしまう。公契約条例は大事だと言っている立場から、具体性が足りない対応についてどう考えるか。 労働賃金等が支払われないのはよくないことであり、職員や従業員の労働環境もしっかり守られるべきだと思っている。ただ、実際にそういう疑いの事例が発生した場合の管轄は労働基準監督署であり、知識や経験、処分の権限がある労基署に、どういう形がよいかを図ってもらうよう、法人に対して促しをするという考えである。 --- ### ④ 請願審査での答弁を差し控えた理由は説明責任の放棄ではないか 立川労働基準監督署からは「本人が手計算して請求させる運用であっても法違反には該当しない」旨の説明を受けたとした市に対し、「どのような質問で確認したのか、ほかのどのような話があったのか」と質問したところ、調査中を理由に答弁しなかった。これは、市自身の対応も調査対象になっているということか。そうでなければ、調査対象でもない市の行いを答弁しないのは、説明責任の放棄ではないか。 調査に関する、市と労働基準監督署の間の意見交換は、調査中にかかわらず、指導監査の運用に関する内容であることから、答弁を差し控えさせていただいたもので、説明責任の放棄とは認識していない。 --- ### ⑤ 一般監査で賃金台帳の適正性は確認していたのか 法第108条・施行規則第54条は、賃金台帳に労働者ごとの実際の労働時間数・延長時間数を記入することを使用者に義務づけている。ところが法人は、10分未満を切り捨てて労働時間数を過少に記入した賃金台帳を3年間作成・維持し、未払いを生じさせた。是正に当たっては、法人が自ら台帳を訂正し、保持している記録から正確な労働時間を算定して未払い賃金を支払うべきである。これをせず計算を従業員に丸投げすることは、過少記入という記入義務違反の状態を継続させるものである。 市は通常監査(一般監査)で賃金台帳の適正性、実際の労働時間数が記入されているか確認していたのか。確認していれば未払いに気づけたはずではないか。法人に台帳の訂正と再計算・支払いを指導すべきではないか。 一般監査は、社会福祉法に基づく社会福祉法人に対する指導監査であり、当該事業所に対するものではない。社会福祉法に基づく一般監査では、各事業所の賃金台帳等を確認する項目はないので、確認はしていない。 --- ### ⑥ 賃金規定を全部非公開とした理由を具体的に説明せよ 市民が、法人の時間外勤務手当の支給要件、算定基礎及び計算方法が記載されている条文部分のみに限定して公開請求したところ、「公にすることにより、当該法人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるおそれがある」ことを理由に全部非公開の決定とされた。この理由を用いるには具体的な蓋然性が必要である。社会福祉法人は非営利・公益法人で公金が投入されている以上、説明責任が強く働く。地域包括支援センターは市区町村が設置する完全に公的なサービスであり、自治体直営であれば開示される労務情報を、委託しただけで非公開にするのは公平性に反する。賃金規定は労働者に周知されるもので秘密性が低く、競争優位を左右する営業秘密ではない。にもかかわらず通知書に具体的根拠を示さず全部非公開としたことは、小平市情報公開条例第8条(公文書の一部公開)にも反する。なぜ法人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれるといえるのか、具体的に説明せよ。 一般的に請求の対象となる文書が、小平市情報公開条例第7条第3号の規定に該当すると考えられる場合は、非公開の決定を行う。また、その文書全体が当該規定の対象となる場合に全部非公開の決定を行うことは、小平市情報公開条例第8条の規定に反するものではない。 #### 就業規則を所有しているのか 令和7年度の12月定例会で名古屋高裁の例を挙げたが、正しくは最高裁第三小法廷判決(令和7年6月6日、令和6年(行ヒ)第94号)であり、「おそれ」は抽象的な可能性では足りず、法的保護に値する程度の蓋然性が要求されると示されている。 就業規則が非公開になったが、これは持っていないから非公開ということなのか。法人から就業規則の提出を求めていないから持っていないという意味での非公開ではなかったと思うが、市としては就業規則を持っているのか。 基本的に全部非公開であるので、そこについては答えない。 所有しているかしていないかも答えられないということか。 繰り返しになるが、そこについては非公開である。 #### 指導対象の条文を全部非公開とする矛盾について 就業規則に不備があれば指導対象になり得る。その指導対象になり得る条文を競争秘密ということで全部非公開にするのは非常に矛盾することだと考える。端数処理の一部を区分できない理由について教えていただきたい。 具体的な内容については、申請者もいらっしゃることから、特にこちらの答えは差し控えさせていただく。 不備があるのであれば、その指導対象になり得る条文を競争秘密として全部非公開にするのは、やってはいけないことだと考える。 :::note ##### 📝 所感 市は「労務管理の是非は労働基準監督署が判断するもの」として、自らが判断する姿勢を示していません。しかし、社会福祉法人には公金が投入され、地域包括支援センターは市区町村が設置する公的なサービスです。委託先の働く人の賃金が適正に支払われているかを確認する手段を持たないまま、注意喚起だけを行うのであれば、同じ問題が再発するおそれがあります。申請待ちの運用を続ければ、計算が難しい従業員は時効で請求権を失います。市が委託者として、自ら実労働時間を確定して支払うこと、時効にかかる前に支払いを完了すること、申請者に不利益を及ぼさないことを求めることは、法律に反するものではありません。今後も改善を求めます。 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